バブルやインフレ懸念により、中国やインドをはじめとした新興国の株式市場は軟調トレンドが続いている。しかし、そんな弱気相場に動じることなく、かの国々への投資を12年に渡り着々と続け、新興国投資のトータル成績35%増を実現している男がいる。人気FPの深野康彦さんだ。
もちろん、単純な“大底狙い”の逆張り投資家とは異なる。上図からもわかるように、新興国投資バブル、リーマン・ショックといった荒波にもまれながらも投資を続行し、プラスリターンを実現している背景には、実践からつかみ取った数々の戦略が隠されている。その極意とは?
──まず、基本的な投資スタンスを教えてください。
「新興国投資は“積み立て”が基本です。しかも少額で、細く長くというのがベストです。この考えは12年間変わりません。値動きが激しい新興国市場に、多額のお金を一度に入れるのはご法度。私自身の体験から見ても、失敗するリスクが高いですから」
──とはいえ投資デビューの目的が、学資保険の代わりって…、リスキーな気も?
「だから積み立てなんです。目的は娘が大学に入る時の資金だから使うまでに長い時間がありました。これは大事なポイントで、新興国株式は短期的に下落しても、長期的には右肩上がりが期待できる。だから、長いスパンで見て、目標額の“山”が来たところで止めればいい。実際、私も約7年で目標を達成したので積み立てを止め、ホールドしたんです」
──ところが、直後にリーマン・ショックが起きて…。
「そう。だから予定額に達した時点で半分でも利益確定しておくべきだった。これは後々の教訓となりました。あるいは、そのまま積み立てを継続していたら、価格が戻った時にもっと利益は増えていただろうけれども、損切りせずに持ち続けたおかげで、今はプラスになっています。万が一のために定期預金も用意しておいたのも良かった。別途、余裕資金があるかどうかも重要です」
──次に買ったのがBRICs各国のファンドで、中国株ファンドはリーマン・ショック前に売り抜けましたね。
「BNPパリバ・ショックで胸騒ぎがして、一旦売りました。半分成功といえるけれど、下がった時にスポットで買えば、もっと正解だった。インド株は下落時に積み立て額を増額したけれど、これもスポット買いのほうが賢明でしたね。けれど、ブラジル株投信は、定期預金の満期金で一度にスポット買いしたら、直後にリーマン・ショックで利益がふっとんだ(苦笑)。スポット買いも2~3回に分けていれるべし、と学びました」
──その後も、中東、アセアンなど積極的に攻めてますね。
「今、中東に投資するのは怖い? イヤ、長期で積み立てるならむしろ逆で、安く買える下落相場こそがオイシイ。BRICs経済の成熟期入り後を見据え、今からコツコツ投資していかなくては、ね」
*次ページより、深野さんの新興国投資をプレイバック!