50代で会社を辞めて「うまくいく人」は何が違う?転身でチャンスが広がる人の共通点とは写真はイメージです Photo:PIXTA

「生き方や感情は顔つきに現れる」という楠木新さん。著述家として多くの人を取材し、さまざまな「顔」に接してきた経験から、いつしか「顔の研究」がライフワークになったと言います。『豊かな人生を送る「いい顔」の作り方』第15回は、楠木さん自身の「人生の転機」を振り返りながら、会社員から独立して「いい顔」をしている人の秘密について考察します。

長年勤めた会社を辞めて
どうやって食べていくか

 私は生命保険会社に勤務していた頃に、組織で働く意味に疑問を感じて、うつ状態で休職したことがあります。47歳の時でした。

 休職によって会社のルールで平社員に降格となりました。これを契機に、私は自分自身の50代以降の働き方について真剣に思いを巡らせるようになりました。「このまま定年まで会社員生活を続けていていいのだろうか」ということでした。

 しかし、長年勤めた会社を辞めるというのは、一大決心。というよりもその先、家族も含めてどうやって食べていくのか、何のあてもありませんでした。

 ある日、会社員から独立した人の新聞記事に目が留まりました。それをきっかけに、中高年以降に会社員から転身して異なる仕事に就いた人に直接話を聴き始めました。

 たとえば、通信会社勤務から提灯職人になった人、建設会社勤務から社会保険労務士で独立した人、外資系メーカー勤務からNPOの常務理事になった人、ユニークなところでは、IT企業の部長職から美容師に転身した人などもいました。

 その頃の私の一番の興味は、ほぼ全員が収入は減少しているにもかかわらず、彼らが楽しそうにイキイキしていたことでした。彼らの転身の話の中に「自分が求めているヒントがあるはずだ」とのめり込みました。

 平社員だったので時間的な余裕はありました。休日には、朝、昼、晩と3人に連続して話を聴くこともありました。知人の新聞記者は身体を壊すから一日2人までにした方が良いとアドバイスしてくれました。