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任天堂はなぜ「ニンテンドー3DS」を値下げしたか

石島照代 [ジャーナリスト]
【第22回】 2011年8月18日
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 任天堂は1989年にゲームボーイを発売して以降、携帯系市場にはソニーのPSPなどさまざまなニューカマーが現れたが、世界王座を一度も明け渡していない。しかし、この携帯系市場に、ディー・エヌ・エーやグリーなどのSNS系ゲームや、DSやPSPに続くゲーム端末としてのスマートフォン(スマホ)などのニューカマーが参入し続けているため、任天堂の牙城が崩れると見る向きも多いようだ。

 この状況を可能にしたのは、携帯ゲーム機以外でもゲームが遊べる端末が登場したこととともに、「ライトユーザーを大量に獲得したDSビジネスの成功が、皮肉にもSNS系やスマホビジネスを可能にさせた」(小山友介芝浦工大准教授)ことも大きいだろう。

 だが、ある業界関係者は「携帯系市場において、子ども市場という基礎需要を持つ唯一のプラットフォーマーである任天堂の牙城を崩すのは容易ではない」と警告する。

 「ゲームボーイ市場の需要を支えていたのは、子どもを中心としたユーザーです。ソニーですらこの市場に切り込むことができていません。SNSが登場しても、任天堂の携帯機は子ども市場を確立し、据置機はマリオシリーズを中心に従来の任天堂ユーザーを獲得するでしょう。つまり、任天堂は基礎需要をしっかりと持つ唯一のプラットフォーマーなのです」

 「『モバゲー』がターゲットユーザーを10代ユーザーから30代ユーザーに切り替えたのは、青少年犯罪や非行に対する保護者からのクレームが背景にあります。したがって、世界市場レベルで圧倒的優位性がある任天堂と、モバゲーが本気で互角で戦えると思っている業界人は、さすがに少ないと思います」

 「しかし、ソフトメーカーにとっては、コアゲーマー市場を開拓してくれるプラットフォーマーでなければビジネスができません。DSとWiiが女性ユーザーやライトでゲーム人口を拡大した恩恵を得ることはできないので、結局、PS VITA、PS3にシフトし、SNSでアルバイトをするような企業経営になるでしょう」。

 たしかに、ゲーム業界において子ども市場という基礎需要は非常に重要だ。しかも、この需要を取り込めているのは歴史的にも任天堂しかないという事実が、任天堂の強みのひとつでもある。このあたりの歴史的背景を知らずに、一時的な情勢だけでゲームビジネスを捉えてしまうと情勢分析を見誤る可能性が高いだろう。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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