ガソリン300円!?金は下落?ホルムズ海峡「有事」が招くスタグフレーションの恐怖【緊急インタビュー】写真:(左)鈴木豪、(右)ぱくたそ

米国によるイラン爆撃とそれに対する報復、そしてホルムズ海峡の封鎖という緊迫した状況下で、原油価格は1バレル100ドルを突破した。この歴史的な転換点において、マーケットで何が起きているのか。原油をはじめコモディティ市場を知りつくした、住友商事グローバルリサーチのチーフエコノミスト本間隆行氏に、原油、金(ゴールド)、食糧などコモディティ市場の深層と今後の展望を緊急取材した。(鈴木豪、ダイヤモンド・ザイ編集部)

原油は「積極買い」で
上がったわけじゃない

――中東の地政学リスクの高まりから、2026年3月9日は原油価格(WTI原油先物価格1バレル)が100ドルを突破し、一時111ドル台まで上昇しました。この原油価格の急騰は、プロの目にどのように映っていますか?

本間隆行さん本間隆行さん●年住友商事グローバルリサーチ チーフエコノミスト。1991年明治大政治経済学部経済学科卒業。外資系非鉄金属先物取引会社、商社系コモディティ先物取引会社を経て、2009年住友商事(株)入社、コモディティデリバティブ取引、ニッケル現物・先物取引を担当、2014年住友商事グローバルリサーチ(株)へ転籍、2015年4月よりチーフエコノミスト、現在に至る。日本貿易会・貿易動向調査委員会委員(14年度~)、日本経済団体連合会・経済情勢懇談会委員(2015年度~)、資源エネルギー庁・原油価格研究会委員(2017年度~20年度)防衛省・防衛研究所非常勤講師(2016年度~)、福岡大学商学部非常勤講師(2019年度~21年度)、SBI金融経済研究所客員研究員(2018年度~)、日本経済調査協議会・第二次地政学委員会委員(2025年度~)など。

本間隆行(以下、本間) 実は、3月初旬の急騰は実需による「積極買い」ではなく、いわゆるショートカバー(売りポジションの買い戻し)によるものです。米国のイランへの空爆をきっかけに原油価格は1バレル70ドル台から90ドル台へ上がる過程で追証が発生していました。週末に安心材料が出なかったことで、耐えきれなくなった投資家が一斉に損切りに走った。これが相場形成の論理を無視した「踏み上げ」を引き起こし、110ドルまで到達したのが真相です。

*原油の先物取引では、「これくらい損が出ても払えますよ」ということを証明するため、証拠金(担保)を預ける。今回の場合、原油価格が下がる方に賭けていた人は、価格が上昇したので含み損が膨らんでしまった。そのため当初の証拠金が不足して追加で証拠金を払う必要があった。これを追証(おいしょう)と言う。払えない場合は、損失覚悟でポジションを閉じることになる(この場合は、高値でも買い戻す必要がある)。これがさらなる価格高騰を招く要因となる。

――「さらに上がる」と読んで投機筋が我先に買ったわけではないのですね。

本間 本当はこのように原油価格が暴騰する前にG7がエネルギー備蓄の放出などを話し合っておくべきでした。でも、それが遅かった。3月7~8日の土・日曜日のうちにマーケットを落ち着かせるべきでした。でも、備蓄放出などの情報が出たのは3月9日(月曜日)です。そのせいで、アジア時間の参加者は疑心暗鬼のままパニック買いを強いられ、迷惑を被ったのです。その後の備蓄放出への合意や、トランプ大統領の戦争を早期に集結させる意思などを見て、でマーケットが一時的に落ち着いたのが、現在地だと言えます。