日本、中国、ヨーロッパ諸国のリーダーに対しても、同じようにモラルリーダーシップが期待されています。それぞれ歴史も違いますし、抱えている課題も違いますが、求めるリーダー像は同じです。市民が必要としているのは、より平和で、安全で、繁栄した世界、誰もが活躍できる自由世界へと私たち市民を導いてくれるようなリーダーであり、口先で約束するだけではなく、自ら行動し、実現してくれるリーダーです。

ハーバードの教授が日本に願う「世界の良心であり続けてほしい」佐藤智恵氏

佐藤 世界最大の軍事大国、アメリカの大統領には、特別な役割があると思いますか。

サッチャー 国を率いるリーダーとして責任がある、という点では他の国のリーダーと同じです。平和で繁栄した国をつくる、国民が政治に参加できる民主的な国家をつくる、という役目に変わりはないでしょう。しかし、軍事大国としての歴史を持ち、自国だけではなく他国を軍事的に支援してきた歴史を持つアメリカには、特別な責任があると思います。

 アメリカ国外で起こった紛争に対して、アメリカが介入すべきなのか否か、を決めるための明確なルールはありません。なぜアメリカはイラク、アフガニスタン、シリアの紛争に軍事介入したのでしょうか。本当にアメリカの国益が損じられたから軍事介入したのでしょうか。その理由を探ってみても、背景が複雑すぎて、私たち国民にもよくわからない、というのが現状なのです。

 こうした中、世界の国々の自由と平和を守ることが、果たしてアメリカの国益につながるのか、という議論も出てきていますが、私自身はその役目を果たせる国はアメリカしかないと考えています。なぜならアメリカを超えるような大国が他にないからです。どのような難しい状況においても、アメリカの大統領はモラルリーダーとして、世界の人々の自由と平和を守る役割を果たすべきだと思います。

佐藤 日本の政治的リーダーは軍事・外交面でどのような役割を担っていると思いますか。

サッチャー  日本のリーダーは、外交パワーを活用して、世界の国々を助ける役割を果たすべきだと思います。日本の軍事パワーは防衛に限られているとはいっても、日本には外交パワーがあります。軍事パワーよりも、他のソフトパワーのほうが他国と相互依存関係を築いていくのにずっと有益なのです。