要約者レビュー
藤生 明
198ページ
筑摩書房
760円(税別)
近頃、「日本会議」という保守系団体が注目を集めている。改憲勢力のなかで重要な役割を果たしているとされ、全国に約4万人の会員を抱えている。憲法改正をめざし政治運動をしているにもかかわらず、政治団体の届けをしていないため、不明な点が少なくない。
その意味でも、本書『ドキュメント 日本会議』はきわめて貴重なドキュメントだ。丹念な取材と膨大な一次資料によって、日本会議の実態に迫ろうとしているからである。本書の内容を簡単に紹介しよう。著者によれば、日本会議のルーツは新宗教「生長の家」にあり、左派学生による学園紛争でキャンパスが席巻されていた時代にさかのぼる。民族派学生は、左翼学生との闘争のなかで同志を結集していったが、安保闘争の終結により求心力を失っていった。三島事件を契機に方針転換するものの、それもうまくいかず、従来の運動論を放棄。神社界とも連携を図るようになり、「解釈改憲路線」に転換したのである。
その後、元号運動の中核を担った「日本を守る会」(1974年)と、「防衛・教育・憲法」を運動の三柱とする「日本を守る国民会議」(1981年)が統合されるかたちで、1997年に日本会議が結成された。
現在、日本会議は全都道府県に250の地方支部をもっているという。はたして日本会議は「日本を裏支配するシンジケート」なのか。その答えは本書で確かめてもらいたい。 (谷田部 卓)
本書の要点
(1) 日本政治を裏から操ると言われる「日本会議」は結成20年を迎え、憲法改正運動や安倍政権とのつながり等で、一躍注目を浴びるようになった。
(2) 日本会議のルーツは新宗教「生長の家」にある。打倒全学連で名を成した椛島と安東が、全国の民族派学生をまとめあげて組織化したことが発端だった。
(3) 元号法制化問題が起きると、保守陣営は地方議会決議運動を展開し、中央政府を動かした。同じ手法で、伝統文化を重視する教育基本法を実現させ、神権的国体論に基づく憲法改正をめざしている。