朝鮮半島情勢の切迫は
「日本の危機」である

文氏の、韓国よりも北朝鮮を利することが明らかな政策提言は、連邦政府構想にとどまらない。たとえば現在日米韓は、北朝鮮の弾道ミサイルを探知し追跡し撃ち落とすための協力を進めている。その柱が高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備であり、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結である。

前者は北朝鮮のミサイルに対する最新鋭の迎撃システムで、後者は日韓が安全保障分野の機密情報を有するための協定である。目的は北朝鮮によるミサイル攻撃などに効率よく素早く対処する能力を備えることだ。文氏はいずれに関しても「次期政権が決定すべきだ」「締結が適切か疑問だ」と述べて、見直しを示唆している。

文氏は韓国の安全を担保する施策や、米国や日本との協力を緊密化する施策には消極的である。逆に、北朝鮮の主張に沿った提言を重ねて今日に至る。平たく言えば、北朝鮮の立場を尊重し、北朝鮮の主張を事実上受け入れるというわけだ。氏が「北朝鮮の手先」だと批判されるのはこうした理由であろう。

北朝鮮勢力が韓国でさまざまな工作活動を行っているのは否定できず、そこに韓国の保守陣営の主張する国民抵抗権、街に出て抵抗するという考え方が生まれてくる。平和が当たり前の日本から見れば、受け入れられないかもしれない。しかし、私たちが韓国の保守勢力を一方的に批判することも不公平であろう。なぜなら、憲法裁判所の判断が示される前、文氏も「憲法裁判所が朴大統領弾劾を破棄すれば、次は革命しかない」と、語っていたからだ。

左右陣営双方が絶対に譲らない構えである。当然、韓国の政治は平穏に収まりそうもない。まさに、洪氏の指摘するように「内戦」が起きているのだ。韓国情勢の切迫はわが国の危機だ。いまや危機は足下に迫っている。そのことへの備えは、日本にできているか。