日本の国土が次々と中国などの外国資本に買収されている。背後にあるのは、習近平国家主席の新シルクロード経済圏構想「一帯一路」だ。国土があってこそ国が存在する、このあたりまえの事実を、私たち国民はどこまで認識しているだろうか? 最新刊『頼るな、備えよ――論戦2017』が発売された櫻井よしこ氏が語った。
すでに日本の土地は
かなり中国に買われている
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」記者、同東京支局長、日本テレビ・ニュースキャスターを経て、現在はフリー・ジャーナリスト。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞。1998年、『日本の危機』(新潮文庫)などで第46回菊池寛賞を受賞。2007年、「国家基本問題研究所」を設立し理事長に就任。2011年、日本再生へ向けた精力的な言論活動が高く評価され、第26回正論大賞受賞。2011年、民間憲法臨調代表に就任。著書に『頼るな、備えよ―論戦2017』(ダイヤモンド社)など多数。
以前の衆院予算委員会(2016年10月4日)で安倍晋三首相が、外国人や外国資本による森林や水源地の買収が急速に進んでいる事態について問われ、こう答えたことがある。
「安全保障上、重要な国境離島や防衛施設周辺での外国人や外国資本による土地取引・取得に関しては国家安全保障に関わる重要な問題と認識している。水源の保全についても重要な観点と思っており(対応を)検討していきたい」
国家の安全保障上、外資による国土買収がどれほど懸念すべき事態であるかは長年、指摘されてきた。民間の側からの警告や提言はこの10年間、頻繁に発せられ、私自身も少なからぬ与野党議員に立法を働き掛けてきた。
平成25(2013)年には日本維新の会の中田宏氏が法案を提出した。自衛隊、海上保安庁、原子力発電所周辺の土地は危機管理上、A分類に指定し、政府の許可なしには取引不可とする。そのほか水源地など国家的に重要な土地はB分類に指定し、国が監視できるようにするという内容だった。
中田氏らはもっと厳しい内容にしたかったのだが、外務省の失態でそれは不可能だということが判明した。わが国は世界貿易機関(WTO)加盟時、何も条件をつけずに加盟したからだ。各国の事例を見ると、その国にとって譲れないことを加盟の条件としてつけている。たとえば、「国土は外国人には売らない」「国土は売るがそれは互恵平等の原則による」などだ。
こうすれば、国土を売らない選択も、あるいは、中国は売らないのだからわが国も中国資本には売らないという選択もできる。外務省はこのようなことも考えずに、WTO加盟を進めた。
こうした制限ゆえに、中田氏らの法案はどうしても完璧にはなり得なかった。それでもないよりずっとましだった。だが法案は、国会に上程されても、まったく審議されずに廃案になった。