2015年に、中国フォースン・グループ傘下の上海豫園旅游商城に買収された「星野リゾート・トマム」(北海道)

 近年、中国資本による海外のホテル投資が活況を呈している。記憶に新しいのは2014年、安邦保険集団(アンバン・インシュランス・グループ)によるアメリカの名門ホテル「ウォルドルフ・アストリア」の買収だ。2015年には上海錦江国際酒店が欧州第2位のホテルグループ「仏ルーブル・ホテルズ・グループ」を、復星国際(フォースン・グループ)が「クラブメッド」をそれぞれ買収し、世間を騒がせた。

 背景にあるのは、中国人の海外旅行ブームである。香港上海銀行は「2024年には中国の年間の海外渡航者は、現在の1億人から2億人を上回る」と予測し、香港のシンクタンクであるフォン・ビジネス・インテリジェンスは「2020年に中国人の観光消費は4220億ドルになる」と予測。海外旅行する中国人の数と消費額が新たな市場を創設するだろうと見込まれている。

 また、中国の経済誌「中国不動産金融」は「2016年1−5月の中国の投資家による海外不動産投資額は170億ドル、中でもホテルへの投資は71億元と42%を占めた」と報じる。ホテル投資は不動産の中でもダントツの投資額となった。

 この勢いは日本にも上陸した。2015年はフォースン・グループ傘下の上海豫園旅游商城による星野リゾート・トマムの買収や、春秋航空によるホテルチェーンの参入(チェーン名:スプリング・サニー)が象徴的だったが、2016年も日本のホテル市場には中国の投資家たちの熱い視線が注がれた。ホテルのみならず、保養所や旅館の購入、民泊のための住居の購入など、宿泊施設への参入が一段と加速した。

日本でホテルを持つことは
中国人富裕層のステイタス

 唐輝氏(仮名)は、インバウンド業界におけるホテル経営のパイオニアといわれる人物だが、「日本にホテルを持つことは、いまや中国人富裕層のステイタスになっている」と話す。

 海外の市場で有名ホテルが次々と中国資本に買収されている状況の中、隣国の日本では、2020年の東京五輪の開催とそれに伴う客室需要増が見込まれている。こうしたことから、日本のホテルをはじめとする宿泊施設は“中国人富裕層必見の投資先”となっているというのだ。