「区画単位」ではなく「地域単位」で
中国の土地買収は行われているが…
「産経新聞」は、編集委員の宮本雅史氏が中心になって、北海道に焦点をあてた土地問題を特集し続けている。北海道では、中国人による土地の買収はほぼ日常茶飯になっており、その規模は100ヘクタール単位と言ってよいレベルまで大型化している。土地の一区画ではなく、地域を丸ごと買われてしまう現象が起きているのである。
背後に中国政府の明確な意図が読み取れる。程永華駐日大使や張小平一等書記官(経済担当)が北海道を訪れ、釧路市長の蝦名大也氏らとも会談し、釧路を習近平主席の一帯一路構想の一拠点に位置づけたいと説明した。釧路をはじめ北海道を親中国の色に染め上げようと、中国大使館は釧路市に孔子学院の開設も打診した。土地だけでなく、文化面からも北海道を搦めとろうという計画であろう。
実態を知れば知るほど背筋が寒くなる。そこで、私が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」は、全国紙に「中国が日本を買い占めています」という意見広告を掲載し、日本国民に訴えた。国土を中国などに買われてしまえば、2度と日本には戻ってこない。国土を売ることは国を売却するに等しいことなのである。中国は1ミリ平方メートルも国土を売らない。その中国に100ヘクタール単位で日本の国土を売り続けることを放置してよいのかと、国基研は問いかけた。非常に多くの人々から賛同の意見が寄せられた。
だが、冷や水を浴びせられるような調査結果がその後に判明した。元総務大臣の増田寛也氏ら民間人がつくる研究会が2016年6月26日に発表したところによれば、日本の国土の約2割に相当する410万ヘクタールが所有者不明だというのだ。九州を上回る広大な土地の所有権が宙に浮いているのである。
国民も政府も、なんという国土意識の欠落であろうか。日本国と日本人の意識そのものをきちんと立て直さなければならないのではないか。大変な作業ではあるが、国家プロジェクトとして、全国の土地の地籍調査を行うことが第一歩である。所有者不明の土地は、十分に調査をしたうえで、国有にするか県有にするか、議論をして最善の道を早急に決めることだ。
あらためて憂いを深くする。国土の2割が所有者不明で、自国防衛は米国に頼りきりの日本とは、一体、どういう国なのかと。これほど、祖国に対して責任を持たない国、国民の運命はどうなっていくのかと。