「小菅村にはありませんが、再造林したものの、シカに苗木を全て食べられ、下層植生(林床に生える下草のこと)まで皆無なところが奥多摩では見られます。小菅村でも、堰堤(えんてい)工事などで山肌を削ったところは植生が戻っていない箇所が見受けられます。

 シカに食べられるのを防ぐには保護カバーが有効ですが、1本100円の苗木に1500円以上もする保護カバーはとても自費ではつけられません。かといって、山全体に何キロも網を張るのも同じく費用がかかるので大きな負担になります」(中田さん)

村を挙げての清掃活動『多摩源流クリーン・グリーン作戦』の様子。村外からの参加も自由!

 これらは、源流の森の恩恵を受けている都市住民にとっても、決して無関係ではない。

「多摩川の流域に暮らす皆さんに、『蛇口の向こうの森』を意識してもらいたい。源流の森に関心を持ち、森の抱える問題を理解して、その解決に向け行動を起こしていただきたい。それには、都市に住む方にとってもっと森が身近な存在になるように、僕たち山側も努力して行かなければならないと思っています」(中田さん)

 小菅村の人口は2005年に1000人を切り、その10年後の2015年には720人にまで減少した。そんな中、中田さんたちが期待を寄せているのが、地域おこし協力隊という制度を利用して、移住してくる若者が増えていることだ。

「彼らは今、小菅村で新たなビジネスに挑戦しています。彼らの新しい発想とネイティブの小菅人との化学反応で、これから面白いことが起きるでしょう」(中田さん)

 源流の森は、関心を持ち、一緒に活動してくれる人を求めている。

 8月11日は「山の日」。高い山の頂をめざすのもいいが、私たちの暮らしに直結する水源の森がある山に、せめて想いだけでも登らせてみてはいかがだろうか。