社員から突然過去にさかのぼって高額の残業代を請求されるなど、企業に多額のキャッシュアウトが発生する労務関連の争いが増えています。前回は、こうした事態をあらかじめ回避するために「定額残業制度」の導入を行い、その具体的な効果をITツールを活用して数字で検証していく方法を紹介しました。今回はこの数字を基に、ムダな残業代の支払いをゼロにする過程を見ていきましょう。
全社員の「定額残業化給与」から
企業全体の未払い残業代を算出
「定額残業制度」は、基本給のほかに社員に支払う諸手当(役職手当、職能手当、業績手当など)を「固定残業代」として固定残業代の枠を出た時間外労働分の割増賃金を支払う仕組みであり、これによって残業代の不払いを防止すると同時に、残業代の単価を下げていくものです(詳細は前篇参照)。
この方法で全社員の残業代単価を算出した後、図1のような一覧表を作成し、現在会社が支給している諸手当の総額を定額残業手当化していきます。
図は3つの枠に分かれています。
【1-①】は社員個別の基本情報です。個人別の賃金や労働時間、残業時間情報が表示されます。
【1-②】は現在の残業代単価、および未払いの残業代が表示されます。事例の会社は社員20名ですが、未払い残業代の合計が月額で196万3810円あります。実際、比較的長時間労働が常態化している企業はこの程度の残業代水準となります。
【1-③】は「定額残業制」を導入した後の未払い残業代の変化を示しています。同制度によって残業代計算の基礎となる賃金が現状の30万円から25万円に減った結果、各社員の残業代単価も低くなっています。