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スマートフォンの理想と現実

誤報なら良かった!このまま撤退で良いはずがない
シャープのガラパゴス事業に期待される進化

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第7回】 2011年9月21日
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 たとえドッグイヤーと呼ばれるほど動きの早い業界であっても、目先の販売動向に揺さぶられることなく、事業を続ける姿勢と覚悟がなければ、ユーザはもちろん、コンテンツホルダーもついてこられない。アップル、グーグル、アマゾンといった、今をときめくプラットフォーム事業者たちが、気がつけば10年選手の域に入りつつあることが、何よりその証左であろう。

 その意味において、ガラパゴス事業の継続(と拡大)という同社の決定方針は、正しいものである。仮にここで全面撤退していたら、コンテンツホルダーたちのシャープに対する信頼は、大きく失墜していただろう。またそれは、ガラパゴス事業だけでなく、同社にとって本丸であるテレビ関連事業の将来にも、重大な悪影響を及ぼしかねない。総合家電メーカーである以上、話はガラパゴスだけに留まらないのである。

鶏と卵の関係に陥ったガラパゴス

 とはいえ、このまま続けるだけでは、ガラパゴス事業は成功しないだろう。私自身は日本発のコンテンツ・プラットフォームはあるべきだと考えており、同事業には一定の成功を収めてほしいと願っているのだが、見通しは厳しい。

 まず、ガラパゴスという端末を「誰も見たことがない」という状態になっていることが、最大の問題である。買おうと思っても手にとってそれを確認することができないというのは、使っている人が多いから使ってみたいという「ネットワーク外部性」以前の段階だ。率直に言って、話にならない。

 これ自体はシャープ自身も課題として強く認識しているようだが、いくら諸事情があったとはいえ、あまりにもユーザ・エクスペリエンスを軽視した流通施策であった。自ら販売店を運営しつつ、通信事業者とも強固に手を組んで拡販に力を入れたというアップルの経験を、もっと素直に正面から受け止めるべきだろう。

 一方、より根源的な問題として、(サービスも含めた)製品設計の難しさがある。

 たとえば日本では、ガラパゴス端末に限らず、スレート型端末(タブレット)の売れ行きが総じて悪い。それこそ現時点で最も販売力があるであろうアップルのiPadにしても、米国市場での売れ行きに比べ、日本市場での弱さは際立っている。その大きな要因は、やはりコンテンツ不足が挙げられる。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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