(2) 設計
要件を元にプログラムやサーバー設定などの青写真を作ることを、「設計」と呼びます。設計はベンダー側の作業ですので、発注者はそれほど深い知識を得る必要はありません。ここでは、概要だけを押さえておきましょう。

ここは実に多岐にわたる作業で、簡単に言いつくすことは難しいのですが、わかりやすいのは画面や帳票の設計でしょう。どんなレイアウトにして、どんな項目を表示するのかなどを設計するわけです。
これを「入出力設計」と言います。

また、情報システムでは、さまざまなデータを管理して処理しますが、それらを定義するのが「データ設計」(その多くはデータベース設計)です。

先ほどの決裁の例でいえば、決裁書類に掛かれる項目、たとえば「申請者名」「申請日付」「申請内容」「決裁者名」などの色々な項目が外部から入力され、データベースなどにしまわれて処理されるわけです。これらの項目を定義するのが、データ設計ということです。

そして、設計の中でも一番のキモは「機能設計」です。たとえば、入力された申請書に記入漏れがないかを判断する演算処理や、経費精算ならさまざまな四則演算を行なう計算処理などがあります。「コンピュータに何かを入力したとき、どんな処理をして、何を出すのか?」を決めるわけです。

機能設計が決まると、ベンダーのエンジニア達は、それを実現するための詳細なステップ(これを「アルゴリズム」と言ったりします)を考えます。これは「処理設計」と呼ばれます。

設計には、これ以外にも「セキュリティ設計」や「性能設計」「ネットワーク設計」などたくさんのものがありますが、今は、それを知る必要はありません。とにかく、設計とは、要件を元にしてプログラムを作ったり、サーバの設定をしたりする青写真を作るものだ、と考えておけば十分です。
 

(3)実装(開発)
昔、このステップの作業はプログラミングが中心で、「製造」などと呼ばれることもありました。今は、たとえばクラウドを利用する場合などはプログラムを作らずサーバに設定するだけで済んだり、パッケージソフトウェア(出来合いのプログラム)を入れるだけという場合も多いので、それらを総称して「実装」と言ったりします。
 

(4) テスト・検収
プログラミングしたり、実装してでき上がったものが、ちゃんと設計書や最初の要件定義書通りに動くかどうかをテストする段階です。これは、単体テスト、統合テスト、システムテストなどの段階を踏んで行なわれます。

その次に、ベンダーが作ったものをユーザが最終的にテストする段階に入ります。当初、提示した要件通りにできていれば、合格として「検収」となります。システム開発の最終段階です。
 

(5)保守・運用
情報システムは、当然ながら導入して終わりではありません。機械ですから、きちんと正常動作をしていることを常時監視して、問題があれば対応しなければなりませんし、使い勝手が悪いとか、ちょっと画面を変えたい、などのマイナーな改修も行ない続けるのが普通です。

また、万一データが壊れた時に備えてバックアップをとっておくことが必要ですし、OSのバージョンアップ(Windowsのバージョンアップなどのことです)に対応する作業もあります。こうした作業をずっと行ない続けるわけですから、情報システムというのは本当に手間のかかるシロモノです。
 

以上、情報システム導入の段取りについて簡単にご紹介しました。

まずは、「へー、こういうステップがあるんだ」程度に思っておいていただければ十分です。
詳細は次回以降、順にお伝えしていきます。

ぜひ、本連載と合わせて、システム開発における発注者側のテキストである『システムを「外注」するときに読む本』を使い倒していただき、ご自身のプロジェクトで実践していただければ幸いです。