2015年または2016年から始まると言われるIFRS(国際会計基準)の強制適用を前に、総合商社大手の丸紅は、一足先に2013年度からの適用を目指している。昨年6月に「IFRSタスクフォース」を経理部内に設置し、2010年度はさらに組織を拡大してく予定だという。そんな丸紅のIFRSへの取り組みと早期適用の理由について、丸紅 経理部・営業経理部担当役員補佐 榎正博執行役員に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林 恭子)

来年以降タスクフォースは拡大
早ければ2012年度からの適用も

――丸紅は昨年6月に「IFRSタスクフォース」を設置したが、いち早くIFRS適用に踏み出したきっかけは何だったのか。

 2008年、当社が連結財務諸表に採用している米国会計基準が、IFRSへ移行する見通しとなった。さらに日本でも、2015年または2016年にIFRSを強制適用する方向性が打ち出された。それが取り組みをスタートするきっかけとなり、旗振り役として「IFRSタスクフォース」を設置した。

 すでにIFRSへ移行した経験があるヨーロッパのコンサルティングファームなどからヒアリングや助言を受け、2、3年は準備期間にかかると判断し、移行のターゲットを2013年度に定めて作業しているところだ。

――「IFRSタスクフォース」の概要は?

 現在、「経理部」と3つの「営業経理部」から人材が集まり、日常業務と兼務しながら、8名体制で運営している。それに加えて、アドバイザーも起用している。コアメンバーは8名だが、実際には他のメンバーも加わるかたちで活動をしているので、1年目としては十分な規模の組織だと考えている。

 今年度は、主に当社が採用している米国会計基準とIFRSとの差異を分析している。この作業を今年早々に終えるのが、このタスクフォースの「第1フェーズ」だ。

―― 来年度以降は、どのような体制で活動を予定しているのか?

 2010年度は、経理部から専任で3、4名、営業経理部からも兼務で3名ほどを起用して、経理部のなかにIFRSの専任組織をつくる予定だ。また、全社に関係するコーポレートスタッフ部門からも、兼務という体制で全社のタスクフォースを立ち上げたい。

 来年度は、現在の会計基準の差異の分析を事業会社のレベルまで落とし込み、より詳細な作業をしていく。

 具体的には、グループアカウンティングポリシーの策定作業、システム対応の必要性の検討などだ。IFRSでは注記のボリュームが2倍になると言われているので、各連結対象会社から入手するレポーティングパッケージ(決算集計や注記情報の元となる)の改修作業も必要となる。J-SOXとの関係でどのような修正が必要か、予算や中期経営計画などの社内管理との整合性をどのようにとっていくかも考えていく。