Eテレの「企画書」

――リサーチの結果、どんな企画が挙がったのでしょうか。

大古 例えば、番組名が「束になってかかってこい!~1人の大人VS100人の若者~」という企画。ネットの若者たちって言いたい放題言うじゃないですか。それを1人の大人が受けて立ってやって、100人の若者たちに思いをぶつける、というもの。「茂木健一郎対ネトウヨ100人」とか「高橋みなみ対スクールカースト上位100人」といった“対決”が案として挙がりました。

 あと「でろでろBAR」という番組名の企画とか。この「でろでろ」というのは「出ろ」という意味です。カリスマブロガーのような人たちに対して「顔出ししないから言いたいこと言えてるんじゃないの?」ということで、彼らをテレビに引きずり出して、BARを舞台に直接話を聞いてみよう、と。あとは、ネットで共通の趣味嗜好を持つ10人をスタジオに呼んでオフ会をしてもらう「ふかいおふかい」や、渋谷で遊ぶ若くて“ムチムチ”している、でも無知な女子高生たちを、悲しい歴史の場所や社会問題を抱える現場に連れていき、彼女たちが何を感じるかをレポートする「むちむち!」といった企画が挙がりました。

 僕がダジャレ好きなので、番組名もダジャレにしたものが多いのですが(笑)、そういう企画を何本も出しまして。「ねほりんぱほりん」もその中の1本だったんです。

Eテレの「制作現場」

――「ねほりんぱほりん」はワケありの人を引っ張り出してくる分、様々な苦労があると思います。

大古 顔出ししないので、事実であることの担保は重要ですね。上層部にも言われましたよ。「顔出しナシってことだと、言っていることが本当かどうかはどうやって見極めるんだ」、「担保はどうするんだ」と。信用問題がありますから当然のことですが。

 でも、それは、当事者に会って、会って、徹底的に会って確証を得ていくしかない。ディレクターは、出演候補者には1人15時間以上掛けて会うんです。それだけ時間を掛けて会っていると、嘘を言っている人は齟齬が出てくるんですね。あとは「そのときのメールのやりとりを見せてくたさい」とか「家の写真撮ってきてください」とか、宝くじに当選したという人には「通帳見せてください」とか、確認できることはすべて確認します。そうしたリサーチの結果「この人だ」という主人公が決まったら、今度は“複眼”で取材に行く。一人の見立て・判断ではなく二人で取材に行ってみて、どちらかが「あれはちょっとおかしいよね」と感じたら気を付けてみるとか、そういう確認をしながらやっています。

――実際、それで言っていることが“怪しく”なっていった人はいるんですか。

大古 いますよ。あるネットのサービスが話題になっていて、それを使っている人に注目して取材を重ねてみたら、だんだん「前回の取材と言ってることが違ってる……」と。そのうち本格的に「これはおかしいぞ」ということになって、結局、実はネットサービス会社の“サクラ”だったことがありました。取材に対して「やる気満々」なケースは疑ったほうがいい、といった経験則もあります。

――そもそも、本物のワケありの人を見つけるということが難しいと思うのですが、どんな風に探し出しているのでしょう?

大古 それはもう本当に難しくて、なかなか見つからないんですよ。だから探し方は確かな方法があるわけではなく、常にケースバイケースで。ディレクターの知り合いの、知り合いの、知り合いをたどって行く……などです。