「プロジェクトを停止して今すぐ帰りなさい」残業を撲滅した経営の決断対話から始めれば「働き方改革」は後戻りしない。さくらインターネットが残業撲滅に成功した理由とは?

サーバホスティングサービス最大手のさくらインターネット株式会社では、働き方についての自社のスタンスを、「さぶりこ」(Sakura Business and Life Co-Creation)と総称。「会社に縛られず広いキャリアを形成(Business)しながら、プライベートも充実させ(Life)、その両方で得た知識や経験をもって共創(Co-Creation)へつなげる」として発信し、注目を集めている。そこには、まず「対話」から始めるという、「後戻りしない働き方改革」のカギがあった。同社の田中邦裕社長に、小室淑恵・ワーク・ライフバランス社長が斬り込む。(まとめ/アスラン編集スタジオ 渡辺稔大、撮影/内藤洋司)

わずか1年半でスゴイ成果
なぜ「働き方改革」に踏み出したか?

小室 田中さん!働き方改革したら、残業時間が月平均8時間未満になって、社員の平均年収も1割以上アップ、株価も上がって、育休取得率は女性100%、男性54%って、成果がどれも凄すぎませんか(笑)。御社は、以前から働き方改革に前向きだったんですか?

田中 いえ実は、4~5年前までは、どちらかというと悪いほうの部類に入っていたんです。

 施策をつくっても、全然風土が変わらない、施策が使われない会社があると思うんですけれど、トップにその気がないケースが大半なんですよね。まさに私がそんなタイプでした。それが、周囲の影響を受けて少しずつ変わってきたという感じです。

小室 田中さんが変わるにあたって、何か決め手があったんですか?

田中 まず、2013~14年ごろに業績が上がらなくなってきた。会社全体に変化が乏しく、現状維持というか停滞感のようなものがあったんです。

 一方で、たとえばサイボウズの青野社長が「働き方を変えないと」と繰り返し発言するのを聞いたり、講演会で「クリエイティブがこれからのキーになる」と聞いたりして、「そうだよな」と納得したのもその頃でした。

 あと、2014年には閉塞感の中で「すごい会議」というメソッドを、わざわざコーチまで招いて取り入れました。

小室 私たちの会社でも「すごい会議」のやり方を取り入れた全社会議をやっています。

田中 その手法で、2016年1月に全役員が集まり、これから人事をどうしていくか、ワークショップ形式で話し合ったんです。人を育てていかないといけないし、人を獲得し続けられる会社になろう、どうすれば社員が変わっていくのかという議論が始まりました。

小室 え?まだ約1年半前……結構最近ですね!