商談をしていると突然、相手の中国人経営者がスマートフォンをいじりだした。なんと失礼なことか思ったが、実は、その行動には実にポジティブな意味があった。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口博)
商談中にいきなりスマホを
いじり出す中国人経営者
今年から月に数日、北京をはじめとする中国の都市を訪れて、中国の経営者向けに能力開発プログラムを実施している。初めて中国人経営者とミーティングをした際に、とても抵抗感を持ったことがある。
初対面の中国人経営者K氏と、中国人通訳と、私の3人でミーティングをした時のことだ。能力開発の必要性を熱く語り合い、意見交換を活発に行っていた最中、突然K氏が自分のスマートフォンをいじりだしたのだ。それも、私にも通訳に対しても、何の前触れも断りもなく始まった。
当然、会話は中断する。時々、K氏は声を発している。そのうち、とうとうK氏は電話をかけ始めるではないか。私が気づかなかっただけで、通訳には断りを入れていたのではないかと思い、気心の知れた中国人通訳に、しかし、少し遠慮しながら、「K氏は何か緊急の要件ですか…」と問うと、そうではなさそうだという。通訳は、K氏のスマホ操作や会話に遠慮してか、言葉少ない。K氏に限らず中国人ビジネスパーソンとミーティングをするたびに、こうした状況に多く接している。
中国人は電車内でスマホ通話をすることに躊躇しない傾向があるというし、国によって異なるスマホに関するマナーの問題とも思えたが、「来客の前でいじりだすとは、ビジネスマナーの問題ではないか」、「一言、断るという配慮がないのか」、「日本に対する特別な思いがそうさせているのか」、「これでは、日中関係は改善しない」、「聞きしに勝る、中国人ビジネスパーソンの傍若無人ぶりだ」…正直、いろいろな思いがよぎった。
意を決して、通訳を振り向かせて、「あまりにも失礼ではないか!」という気持ちを中国人通訳に悟られないようにと思いながら、しかし、言葉は荒くなってしまったが「いったい何が起きたのですか?」と問うと、通訳から思いもよらなかった答えが返ってきた。