生活費が完全に止まった後、裁判所から頼子さんのもとに手紙が届きました。頼子さんは手紙を開封するとビックリして激しいめまいに襲われ、さらに過呼吸を引き起こして、その場にひっくり返ってしまったそうです。手紙の件名は「離婚調停の申立」。夫は頼子さんと離婚すべく裁判所へ離婚調停を申し立てたのです。
さらに夫は調停の申立書を補足するかのように「一緒になりたい人がいるから離婚してほしい。春香(娘さん)はこっちで育てるから、さっさと返せよ!」とメールを送ってきました。“今にも死にそうで役立たずの妻は用なし!まだ若くて健康、少なくとも自分(夫)より長生きできそうな女へ乗り換えたい!”!と、頼子さんは自分の存在を全否定されたのだから、病気が悪化するほどショックを受けても不思議ではありませんし、闘病中の妻を「ポイ捨て」するのに何の躊躇もしない夫の異常性を目の当りにして、平常心を保つのは到底無理でしょう。
過呼吸を起こし「ダンナは今まで家のことに見向きもしなかったんです。それなのに娘を引き取りたいってチャンチャラおかしいですよ!もしかして、オンナに母親代わりをやらせようと企んでいるのかも!?アタシは娘のために離婚なんてしたくないし、早くオンナを追い出して、元の生活に戻りたい!」頼子さんはあまりにも興奮しすぎて首から上、そして左右の耳までも真っ赤に染まっていました。
離婚調停、娘の不登校解消、生活費の復活、愛人の特定、そして病気の治療…頼子さんは自分が闘病中にもかかわらず複数のトラブルに追われ、全く余裕がない様子で「大事なこと」に気がついていなかったのです。
万が一離婚成立前に亡くなった場合
娘の親権は?
私が最も心配していたのは「万が一、途中で頼子さんが亡くなった場合のこと」です。娘さんは誰が引き取るのでしょうか?病気を治そうと必死で頑張っている頼子さんに向かって「もし(治療が功を奏さず)死んでしまったら」という後ろ向きな言葉、運気が下がる物言い、そして最悪のタラレバを伝えたくはなかったのですが、とはいえ娘さんのことを考えると見過ごすわけにはいきません。
「万が一のとき、離婚せずに婚姻関係を続けると娘さんはご主人のところへ連れ戻されますよ」
私は頼子さんに対して心を鬼にして切り出しました。