ここ数年は増益を続け一見、業績好調に思えるJT。しかし、足元では、国内で普及する加熱式たばこの展開に後れを取り、収益の要である海外でも、得意のM&Aによる成長モデルが限界を迎えつつある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)

  5年続いた長期政権がいよいよ幕を下ろす。来年1月、小泉光臣現社長に代わり、現在JTの海外事業を統括する子会社、JTインターナショナルの副社長を務める寺畠正道氏が新たに社長に就く。長らく海外で辣腕を振るってきた新社長だが、新たな船出には二つの課題が待ち受けている。

 一つは、加熱式たばこの急速な普及による国内環境の激変だ。2016年は、主力ブランドの「メビウス」の値上げや「ナチュラル・アメリカン・スピリット(アメスピ)」の買収効果で、国内たばこ事業は増収増益だった。しかし、17年は、一転して600億円の減収、350億円の減益予想となっている(図(1))。

 国内では、いち早く全国での商品展開を仕掛けた米フィリップ・モリス(PM)の「iQOS(アイコス)」が加熱式たばこ市場を席巻する。PMの資料によれば、17年第3四半期で、すでにiQOSはたばこ市場全体の12%のシェアを占めている。一方、JTの加熱式たばこ「Ploom TECH(プルームテック)」は、東京都と福岡市での販売にとどまる。