2つの驚くべき変化がビジネスの世界で起きている。1つは、組織で働く者の多くが正社員ではなくなっていること、もう1つは雇用や人事の業務についてアウトソーシングが進んでいることだ。つまり、組織と働き手の間の関係が希薄化したのである。知識経済下で競争に打ち勝つための必須条件は人材であるのに、この変化によって、組織が人を育てる能力まで失うおそれがある。変化の流れは止めることはできないが、知識組織の人材のマネジメントを再考すべき時である。
現在起こっている2つの大きな変化
さしたる注目を集めることなく、驚くべきことがビジネスの世界で起こっている。
第一に、働き手のうち唖然とするほど多くの者が、現に働いている組織の正社員でなくなっている。第二に、ますます多くの企業が雇用と人事の業務をアウトソーシング(外部委託)し、正社員のマネジメントをしなくなった。この2つの流れが近い将来変わる気配はない。むしろ加速していくものと思われる。もちろんそこには本稿に述べるような理由がある。
とはいえ、この組織と働き手との関係の稀薄化はあまりに重大な危険である。雇用関係にない人材の長期の受け入れや、雇用関係の雑務からの解放によるメリットの享受は、たしかに1つの行き方である。
しかし、人の育成こそ最も重要な課題であることを忘れてよいはずがない。それは、知識経済下において競争に勝つための必須条件である。雇用と人事を手放すことによって、人を育てる能力まで失うならば、小利に目が眩んだとしか言いようがない。