「それから履歴書用紙も、履歴書に貼る写真代も。就職活動には本当に、こまごまとお金がかかります」(Mさん)

 2013年、生活保護基準の引き下げが行われたとき、すでに生活保護で暮らしていたMさんは、「外出して友達と会う」か「冷暖房を使い入浴する」の二者択一を迫られた。外出すれば交通費も飲食費もかかるので、冬は暖房を使わず、厚着して寒さをしのぐ。すると風邪を引きやすくなるなど、身体の健康が脅かされる。外出を控えれば、1人で家にいて孤立がちになり、精神の健康が脅かされる。「外出か、冷暖房と入浴か」は、「精神的健康か、身体的健康か」の二者択一でもある。どちらかが損なわれている状態を「健康」とは呼ばないだろう。

 現在のMさんは、精神の健康と身体の健康を天秤にかけるような生活の中から、就職活動の費用を捻出している。生活費全般を「できるだけガマン」しながらの就職活動だ。生活保護の目的は、「最低生活の保障」と「自立の助長」なのだが、現在の生活保護はすでに、就職や就労継続を「助長」できるものではなくなっているのではないだろうか。

「働くべき」と言い、「働け」と尻を叩きながら、しかし働くことを応援しているようには見えない生活保護の矛盾に、多くの人が気づき始めているようだ。歩道や交差点でデモを眺める人々の視線は、決して冷たくなかった。一度だけだが「がんばってー!」という声も聞こえた。かつてしばしば聞かれた「デモができるくらいなら働けよ」という声は、少なくとも私の耳には全く入らなかった。

「皆の日常に直結する生活保護」
社会の理解は以前より進みつつある

 生活保護で暮らした経験を持つ援助職の和久井みちるさん(50代)は、この日、職場の休暇を利用してデモに参加していた。社会の変化は、和久井さんも感じているようだ。

「2011年・2012年ごろ、生活保護に関するデモに参加しているとき、周囲を歩いている人から感じたのは徹底した無関心でした。皆さん、自分にも関係することだとは思っていなかったんでしょう」(和久井さん)