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スマートフォンの理想と現実

年越しの「あけおめ」メールは自衛のためにも自粛を
多くの疑問符が残ったNTTドコモ「spモード事件」

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第14回】 2011年12月28日
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ヒヤリ・ハットの原則

 なぜこのような問題が起きてしまったのか。専門家であれば、今回のようなspモードの構造に関する詳細が開示されれば、「え、本当?」とすぐ思ってしまうほどの脆弱さである。

 その詳細な背景や理由について、もちろんNTTドコモからの説明はない。従って以下の説明は例によって私自身の推測となる。

 まずNTTドコモ自身が、ISPの大規模運用に慣れていなかったという基本的な課題が、根底に存在するように思う。というのは、従来のフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)では、物理回線とISPを別々には運用しておらず、ゲートウェイを介してインターネットとドコモ通信網を接続し、サービスを一体化してシームレスに提供していた。こうした状況に、当のNTTドコモ自身が、すっかり慣れきってしまったのではないか。

 すると何が起きるか。この「何も考えずにとりあえずインターネットも含めたサービスが利用できる」という状況に慣れきった利用者に対して、スマートフォン時代にも従来と同様の利便性を提供しなければならない、と考えるはずだ。たとえば、IDやパスワードを入力させることは御法度、サービスにアクセスしたらすぐに認証され、決済も含めた高度なサービスを安全に利用できなければいけない、しかも信頼性は高く――こんなところだろう。

 言うまでもなく、この実現はそう簡単な話ではない。簡単でないからこそ日本では、パソコンベースでの本格的なWeb利用は必ずしも社会全体に定着しないし、それに抵抗感(たとえばクレジットカード番号を入力したくない、いくつもIDとパスワードを管理したくない、等)を抱いていた利用者の受け皿として、フィーチャーフォンが大きく飛躍した。

 これをスマートフォン時代にもう一度、と考えたのが、spモードなのであろう。確かに技術資料等を眺めてみると、細かな点があれこれよく考えられている。今回のような事故さえなければ、それなりに便利なサービスとして、フィーチャーフォン利用者のスマートフォン移行を促す重要なブリッジの役割を果たすはずであったろう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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