披露宴は終盤を迎えました。
  「ここで、新婦から感謝のお気持ちを込めてご両親へお手紙を……とご紹介したいところですが、その前に……」
  お父さまにスポットライトが当たります。
  通常であれば、花嫁からのお手紙の時間。
  お父さまがいそいそとお手紙を取り出すと、会場は笑いに包まれました。
  ですが、お父さまがお手紙を取り読み始めると、会場は水を打ったかのように静まりかえりました。
  「君の命を授かったとわかった時、嬉しくて嬉しくて仕方がありませんでした」
  「幼い頃はおてんばだった君、怪我をしないか毎日気が気ではありませんでした」
  幼少時代の思い出話を語るお父さまの口調は優しく、新婦への愛がにじみ出ていました。
  そして、お父さまは続けてこんなエピソードをお話しになったのです。
  「君は小学生の頃、学校でいじめにあっていましたね。
  毎日泣きながら帰ってくる君。
  学校に行きたくないと駄々をこねる君。
  けれども、甘やかしてはいけないと厳しく叱ってしまったこともありました。
  君はいつも泣きながら布団に入っていましたね。
  けれど、君が眠りについた後、
  君の寝顔を眺めながら、
  この子だけは何があっても守りぬかなくては、
  どんなことがあっても自分は絶対にこの子の味方でいようと、
  君の涙の跡が残るほっぺを撫でながら毎晩のように心の中で語りかけていました」
  新婦の大きな瞳から涙がこぼれ落ちました。
  そして、その理由はすぐに明らかになったのです。