結婚式が終わった後、新婦に訊ねました。
  「お父さまのエピソードと新婦さまのエピソードが重なった瞬間、鳥肌が立つほどびっくりしました。あれはお父さまのお話を聞かれて急きょ話されたのですか?」
  「いえ、違うんです。父との思い出を手紙に書こうとした時に、まず思い出したのがあのほっぺを毎晩撫でてくれていたことでした。ずっと感謝していて、いつかありがとうと言いたかったんです。だから一番伝えたいこととして手紙に書きました。まさか父も覚えていてくれたなんて……」
  同じことをお互いに思い出すことができたことは奇跡のようで嬉しいと笑顔でおっしゃっていました。
  その後、新婦は新しい暮らしを始められました。
  新居のリビングに額に入れて大切に飾られているのは美しい絵でもなければ高名な書でもなく、あのお父さまの手紙だそうです。

  後日談があります。
  このエピソードを私のブログに書いたところ、500件近いコメントが寄せられました。
  「来月花嫁になる娘を持つ父です。私も娘に手紙を書くことを決めました」
  「新米パパです。1歳半になる寝ている娘のほっぺを今ちょっと撫でてみました。僕もこんな父親になれるかな」
  すでにお父さまを亡くされている女性からは、こんな書き込みがありました。
  「私も小学生の時にいじめにあっていました。もしかしたら私の父も寝ている時に語りかけてくれていたかもしれませんね。今になってはもうわからないけれど、そう信じます」
  派手な話でも、ドラマチックな話でもありません。
  けれども、この父娘の愛に共感し、涙を流す人がこれだけたくさんいる。
  日本人の心の温かさに改めて心を打たれました。


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「ウェディングストーリー 大切な人に会いたくなる結婚式の物語」

【著者オフィシャルプログで紹介後、TVなどメディアで話題となった『優しい記憶』も収録された、12の感動の物語】
本書は、新婦とその父との親子の強い絆を綴った『優しい記憶』を含め、著者の有賀明美さんが12年間のウェディングプランナー人生の中で自身が手掛けた印象に残っている結婚式の実話と、T&Gに在籍する全国のウェディングプランナーが創り上げた結婚式の実話、計12エピソードを収載した書籍です。ぜひご一読ください。
カバーイラスト/柴田ケイコ

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有賀明美(ありが・あけみ)
これまで数多くの芸能人やアーティスト、プロスポーツ選手などから指名を受け、その結婚式をプロデュースしてきた実績を持つウェディングプランナー。
型にはまった結婚式が一般的だったなか、「サプライズ」という新しい概念をつくりだした“オリジナルウェディング”の先駆者的存在。ブライダルにおける大胆な発想力と、それを支えるエネルギッシュな行動力は各所で高く評価されており、多くの番組に出演するだけでなくドラマ「ウェディングプランナー」、「夫婦。」、「大切なことはすべてきみが教えてくれた」などでのウェディング監修を担当。
近年ではプロデュース力を活かして、T&Gオリジナルのウェディング商品を秋元康氏とのコラボレーションにより生み出すなど、幅広い分野へとその活躍の場を広げている。
著者に『なりたい自分になれる魔法の幸せ計画』がある。
テイクアンドギヴ・ニーズHP http://www.tgn.co.jp/
有賀明美オフィシャルブログ http://ameblo.jp/a-ariga/