写真=高木将也
教授動静<br />【第1回】キュレーターは坂本龍一<br />グールドの魅力に多方向から光をあてたスペシャル・イベントGGG

 2017年12月13日から17日にかけて草月会館、カナダ大使館を会場として行われたイベント『GLENN GOULD GATHERING』(以下GGG)は圧巻のイベントだった。

 このイベントはタイトルどおり、カナダ生まれの演奏家/音楽家のグレン・グールドにちなんだもの。2017年がグールドの生誕85年、そしてその祖国のカナダの建国150年という区切りの年ということで、世界各国でグールドにちなんだイベントが行われ、日本でのGGGもその一環。

 このGGGが特筆すべき内容となったのは、なによりキュレーター/ディレクターに坂本龍一が立ったことが大きい。

 坂本龍一は少年時よりグールドの演奏に大きな影響を受けた音楽家だ。これまでその影響をさまざまなメディアで語ってきたほか、近年にはグールドの名演を集めたコンピレーションCD『グレン・グールド 坂本龍一セレクション』を2種監修してもいる。

 加えて、近年、札幌国際芸術祭など大規模なアート・イベントのキュレートを担当してきただけに、音楽のみならずさまざまな表現でグールドというテーマを掘り下げることになった。

 坂本龍一はまずこのGGGの企画のオファーを受けたときに、すでに過去研究されつくしてきたグレン・グールドという高名な音楽家に対して、いまの時代にどう光を当てるのかを思案したという。レコード、CDという音の記録はもちろん、映像や書籍も多数あるグールドを、それらの資料を並べて紹介するだけではつまらないし、意味はない。この21世紀のいまだからこそ見せられるグールドの魅力があるのではないか。こう考えた坂本龍一のさまざまなアイデアが、GGGの内容を豊かなものにした。

 そのGGGの内容を見ていこう。

 まずは正攻法でグールドという音楽家の詳細を紹介する。カナダ大使館のオスカー・ピーターソン・シアターを舞台としたグールドに関する、あるいはグールド自身が企画した各種のドキュメンタリー映像の上映によって、グールドという演奏家、作曲家にとどまらず幅広い表現と音楽に対する考察を行なったアーティストを真正面から紹介した。

 同じくカナダ大使館では写真家ドナルド・ハンスタインによるグールドを被写体にした写真展も開催。

 そして、日本、あるいは日本人とグールドの関係性を探ったのがトーク・セッションとグールドが愛した日本の小説、映画関係の資料の展示、上映だ。