キヤノンがカメラとプリンターの会社から脱皮しようとしている。事業構造転換の手段は総額1兆円のM&Aだ。東芝から買収した医療機器など新規事業の売上高を、2020年までに全体の3割に増やす。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)

 キヤノン本社では毎日、役員らによる“朝会”が行われる。その場で最近、御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(CEO)が他の役員に質問を連発し、叱咤激励する場面が増えているという。

 御手洗氏が血気盛んになっているのには理由がある。キヤノン史上最高の売上高4兆4813億円(2007年12月期)を超えることが同氏の“悲願”。前回ピーク時から10年かけて、やっと記録に手が届くところまで戻ってきたのだ(図(1))。

 07年当時、キヤノンは8期連続の増収増益を実現するほど勢いがあった。余勢を駆って売上高5兆円を目指したが、リーマンショックに阻まれた苦い経験がある。

 片や17年12月期。同社は業績見通しを期中に3回引き上げるほど好調だ。御手洗氏は07年に似た高揚感と手応えを得ているのだろう。最近、対外的に20年12月期の5兆円超えに自信を見せている。