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キヤノンの将来を決めるトップ人事に、社内の評価は真っ二つに割れた。
1月27日、キヤノンは、3月30日付で御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(CEO、80歳)が兼務している社長職を退任し、後任として眞榮田雅也専務(63歳)が社長兼最高執行責任者(COO)へ昇格する人事を発表した。
一つ目の評価は、「引き続き、実力会長がCEOとして指揮を執るわけで、実態は変わらない」(キヤノン幹部)とする冷めた見方。もう一つは、「眞榮田さんは軸がぶれず、会長におもねることもない。後継候補として適任だ」(別の幹部)と歓迎する評価だ。
いずれにせよ、御手洗会長がここ10年の懸案事項に一つの解を見いだしたことは事実だ。かつて、御手洗会長は本誌のインタビューで、「人材不足、とりわけ研究開発部門を束ねられる人材の不在が最大の課題」と語っていた。
業績は、売上高4兆円の壁をなかなか越えられず、足踏みが続いている。カメラ、事務機の二大事業に次ぐ「第3の柱」が打ち立てられていないからだ。その上、ハード機器本体ではなく、交換レンズやカートリッジといったランニングビジネスでもうける高収益モデルにも陰りが見えている。
御手洗会長は、研究開発部門に揺らぎを与え、「第3の柱」となる新規事業を発掘しようとした。有能な責任者を抜てきしたり、元日本テキサスインスツルメンツ社長の生駒俊明氏を招聘したりするなど手を尽くしたが、「結果は失敗に終わった」(キヤノン幹部)。
そこで遅ればせながら実現したのが、今回の社長人事と、それに並行して組み込まれた機構改革だ。