さらに「ここまで来たか!」と驚いたことがあった。なんと、施設内に朝食用レストランを備えていないビジネスホテルだ。考えてみれば、そのためのスタッフや厨房を確保するより、いっそ省いてしまえばそこにかかるコストは不要になる。そのホテルでは、朝食用に食事券を販売して、近隣の提携飲食店に誘導するシステムを取っていた。申し訳程度の食事内容なら、こっちのほうが潔い。

 そもそもビュッフェスタイルの朝食は宿泊者数にかかわらず、一定量を用意する必要があるから、極端な場合、数名のために準備するというのもムダが出やすいだろう。ちなみにこのホテルでは、会計もすべてチェックイン機で利用者が行うシステム。お金の受け渡しに人を介さないことも合理化の一つだろう。設備を簡素化・集約し、人手をその分最低限に減らしていく。この先、こうしたスタイルのビジネスホテルがどんどん増え、価格競争の波を乗り越えて行こうとするのだろうか。

一泊朝食付きから
朝・夕二食付きの時代に変わるか?

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 合理化ばかりではなく、「おっ!」と思わせるサービスで楽しませてくれるホテルもある。

 ドーミーインは、「夜鳴きそば」の無料サービスが人気だが、さらに平日限定で、夕食も無料でふるまっている(一部ホテルのみ、先着10食、30食など)。さらに、東海エリアを中心に展開しているABホテルでは、やはり一部ホテルに限り、日替わりで丼セットや定食のメニューを無料で出しているのだ。

 無料ではないが、安い値段で本格的な味を楽しめるホテルもある。静岡県内に2ヵ所を展開するホテルnanvan(ナンバン)は、親会社がカツオ・マグロを扱う漁業会社ということもあり、天然マグロを使用した海鮮丼や握り寿司などを注文できる(予約制)。さらに、人気の海鮮丼付き宿泊プランまで(マグロを使った夕食や宿泊プランは焼津のみ)ある。マグロが一本当たる抽選や宿泊ポイントが貯まると、やはりカツオやマグロ加工品、あるいは無料宿泊券と交換できる。無料宿泊券もいいが、「マグロがもらえる!」と聞くと、ついそそられるではないか。

 このように、食事コストを削るホテルもあれば、逆に充実させるホテルもある。無論、価格や立地、部屋の快適さに設備の充実ぶりは重要な宿泊動機だが、こうしたユニークさは利用客の記憶に残るものだ。大きな流れは省手間化・合理化に向かっていくのだろうが、どこかで「おもてなし」の心を感じさせてほしい。

(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)