Aさんは資産運用で順調に成果を上げていった。

 月に換算すれば1~22万円というお小遣い程度の金額であったが、Aさんに不満はなかく、むしろ自分の運用方法を誇らしく感じていた。

「株などの金融商品の売買は結構『欲との戦い』みたいなところがあると、やるうちに知りました。『あのタイミングで売り買いしておけば…!』と思うことの連続で、取らなかった狸の皮算用ばかりしてしまう。

 しかし『前回は慎重になりすぎて利益を取り損ねたから、次はもっと大きく取引しよう』とやってしまうとバランスを崩し、破産への道を辿ってしまうわけです。あの山っ気を抑制することが、私の資産運用がうまくいっていた一番の理由だったと思います」

 2年経ち、200万円から始めた資金は増えたり減ったりを繰り返しつつ40万円ほどプラスになっていた。株はAさんにとって生きがいになりつつあった。

子どもが生まれ
忘れていた欲が……

 そんな中、Aさんは結婚した。妻には自分が株をやっていることを話し、さらに資産運用に使っている口座の情報を教え、月に1度必ずその内容をチェックしてもらえるよう頼んだ。第三者による客観性を導入することで、資産運用に対して緊張感を持てるようにするためであった。

 結婚2年目にAさんの妻が妊娠。Aさん夫婦は大いに喜んだ。と同時に、Aさんは新たな責任を負う思いであった。Aさんは金銭的な面で家族を何不自由なく養っていこうという意志に溢れていた。年収は一般的なサラリーマンの平均よりわずか上程度だったが、しかし自分には株がある。数年やって順調に資産は増えている、自分には株の才能があるのかもしれない、株さえあれば家族を裕福に養っていける……Aさんがこう考えたのも無理からぬことであった。

 子どもができるとわかり、収入が一気に物足りなく感じられた。保険、まだ見ぬマイホームのローン、養育費、子どものために新たに貯金も始めたい。かくしてAさんは、値動きが激しくギャンブル性の高い銘柄に手を出したのであった。