「数字」「事実」「固有名詞」
「見たこと・聞いたこと」を入れる
2つの「低評価の解答例」に共通する問題点は、話が漠然としているということに尽きます。
低評価の解答例(1)で言えば、「優れた学びの環境」とはどんな環境か、「多彩な人たちと触れ合い、学び合うことで自分自身を高め」とはどんなことかイメージできないため、読み手に非常に空疎な印象を与えます。
低評価の解答例(2)も「住民の声を少しでも多く政策に反映し」とはどう反映するのか、「市政の情報も住民と共有し」とはどう共有するのか、具体的な状況が頭に浮かびません。
抽象的な文章には、説得力がありません。説得力がない小論文は、間違いなく大幅に減点されます。
では、具体的に書くためには、何をどう変えればよいのでしょうか。
わかりやすくするため、小論文を離れて考えてみます。私の故郷は大分県なので、「全国の人々に大分の良さが伝わるような文章」を例にします。
【問題】
大分県の魅力はどのようなところか、あなたの考えを述べなさい。
【解答例1】
大分県を訪れた人々は、本当に素晴らしい場所だと誰もが心から喜んでくれます。文化、歴史、食べ物、美しい自然の風景どれをとっても、ここでしか味わえない魅力にあふれています。最近は海外からのお客様も多く、日本人だけなく世界中の人びとにも満足してもらえる、心からお勧めできる場所です。
【解答例2】
大分県の一番の魅力は温泉です。別府、湯布院には三千以上の源泉があり、肌に優しい泉質で美肌効果も十分、別府湾の夜景を一望できる温泉もあります。また、たっぷりな肉汁と柔らかな食感の豊後牛のステーキ、ぷりぷりの車エビの刺身など、おいしいものをたくさん味わえます。
解答例1は、言葉に力は入っていますが、大分県の魅力がどこにあるのか何一つ伝わりません。
一方、解答例2は、大げさな言葉は1つも使っていませんが、すぐに頭にイメージが浮かぶはずです。解答例2のほうが字数は短いにもかかわらず、です。
「本当に素晴らしい」「ここでしか味わえない」のような抽象的な言葉を100個並べるより、1つの具体的な事実を書いたほうが、はっきり伝わるのです。
小論文は、自分の主張を「なるほど」と相手に納得してもらうための文章です。
「具体的に言うとどういうこと?」と疑問を持たせてしまったら、致命傷になります。
具体的に書くためには、事実、固有名詞、数字を入れる、視覚、聴覚、触覚、味覚などに訴える描写をするのがポイントです。解答例2で言えば「別府」「湯布院」「三千以上の源泉」「肌に優しい泉質」「夜景を一望できる」「たっぷりな肉汁」「豊後牛のステーキ」「車エビの刺身」などがそれに当たります。「読み手の頭にイメージがすぐに浮かぶように書く」のです。
なお、前ページの高評価の解答例(2)には、「積極的に取り組む」「連携を一層深めていく」などの抽象的な言葉がありますが、これらは具体的に説明した内容の「まとめ」の役割を果たしますから、問題ありません。話のメインとなる内容を、抽象的な言葉で書いてはいけないということです。
本書では、このほか、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を凝縮して伝えています。
ぜひ、直前対策に使い倒してください。