「彼女パーソナリティ障害かも」
妻は疲れ切った顔で切りだした
「ねぇ、境界性パーソナリティ障害って知ってる?」
ある日、妻の響子さん(仮名・31歳)が切りだした。
「聞いたことがあるような気はするけど、分からないな。それがどうかしたの」
夫の博樹さん(仮名・38歳)が聞き返すと、響子さんは疲れ切った様子で語り始めた。
彼女は独立3年目のフリーライター。1年ほど前から仕事を手伝ってもらっていた駆け出しのフリーライターKちゃん(25歳)が、「境界性パーソナリティ障害のような気がする」という。
Kちゃんには博樹さんも何度か会ったことがある。小柄でスレンダーだが、バストが大きい。ショートカットでボーイッシュないでたちだが、顔立ちは小鹿のように愛らしく、鈴が転がるようなキラキラした声でよく笑う。中高生時代は、たぶん学校で1、2を争う人気者だったにちがいない、実に魅力的な女性だ。
響子さんも、同性ながらその魅力に惹きつけられ、出会ってすぐに意気投合。仲良く仕事していたはずなのに、いったい何があったのか。
Kちゃんは広告プロダクションの社員だった。中途採用で、以前の職場は主に絵本を制作する出版社。絵本の執筆経験があるため、「文章のプロ」としても期待されていた。
「力のある子だから可愛がってあげてよ」
社長からじきじきに、指導を依頼された。