「Kちゃん、いるんだろ。分かっているよ。君は赤ちゃんなんだ。僕がいないとだめなんだ」

 ついには婚約指輪まで送られてくる始末。

 怯えたKちゃんが、昼も深夜も構わず電話をかけてくるため、響子さんは仕事に支障を来たすようになった。

 この編集者の件は、出版社の上司に説得してもらい、諦めさせることができた。

 Kちゃんの母親は精神的に不安定なところがあり、彼女は「ほぼお父さんに育てられたようなもの」だという。

 高校時代には、交際していた男性が、バイクの事故で亡くなった。

「私は周囲を不幸にする人間なんです。生きていちゃいけないのかも」

 飲みに行くたびに、最後はそんな話になる。

 Kちゃんにはその後も、ストーカーのように執着して来る男性が次々と現れ、なかにはクリエーターと同じように妻子ある男性もいた。響子さんはいつしか、(本当の被害者はむしろ、男性たちなのではないかしら)と疑うようになっていた。

 響子さんはその都度、Kちゃんのマンションに駆けつけたり、相手と話し合ったり、長々と電話相談に乗ったりした。

 仕事ができないだけでなく、ものすごくめんどくさかった。実にささいなことで動揺し、事実をよく確かめもせず、誤解したまま、「大変です」とか「ひどいこと言われました」と叫ぶようにして連絡してくる。だが、響子さんが代わりに対応し、確かめると、少しも大変ではなかった。