良い制度を作るためには、国民一般が、才能のある若者に嫉妬しないことと、若い才能の活躍を社会として貪欲に利用しようとすることとが重要だ。

「LIFE SHIFT」の三つ目の弱点

 前掲書「LIFE SHIFT」はベストセラーでもあるし、示唆に富む良書だが、筆者は、同書が提案する生き方を、現在及び近未来の日本に当てはめる場合、(1)学校教育の効果の過大評価と、(2)転職・再就職のコストの過小評価、の二つの弱点があるように思っていたが、これらに加えて、(3)若年期の能力開発の必要性・有効性を強調していない点に、三つ目の弱点があるように思う。

 一般論としても、早期に能力を高めて最初のキャリアを成功させた場合、次の仕事を覚える上で時間的に余裕があるし、経済的にも豊かだろう。長寿化に対応して長く働くことを考えるに当たって、若年期の能力開発は決してマイナスにならないばかりか、個人としても社会としても有効な(たぶん最有力な)投資対象だ。

 また、「LIFE SHIFT」は、大学卒業後に自分の可能性を拡げるための放浪者的な時期(「エクスプローラー(探検者)のステージ」と呼んでいる)を持つことを推奨しているが、ビジネスパーソンの場合、20代(特に半ばくらいまで)は、適職を探す時期であるのと同時に、仕事の知識・スキルを吸収する力が豊富な「貴重な時間を使う時期」でもある。

 同書が勧めるように「18〜30歳ぐらいの時期」を自分探しの経験作りに費やした人物は、突出して能力が高い人でなければ、企業側から見て「使えない」「使いにくい」「使うのに時間と手間が掛かる」といった難点を持つ人材になる可能性が大きい。

 個人差があるので、全ての人がそうだと言いたいわけではないが、キャリアプランニング(職業人生設計)にあたって、「30歳」は自分探しの期限を過ぎているし、将来一流の仕事を成し遂げるためには「18歳」よりも前を有効に使う「投資」が必要なのではないか。

「超一流」の若者たちを見て、そのように考えた。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)