救急車やパトカーを
呼び出すアプリが必要!?

 これは救急車だけの問題ではない。何か事件が起きてパトカーを呼ばなければならない、という場合も同様だ。たとえば、どこかのショッピングセンターの駐車場でいきなり銃を突きつけられ、スマホで911(日本の110番)にかけたはいいものの、緊急事態で慌ててしまい、正確な場所などが伝えられず、結局は利用者の助けにならない、ということもあり得る。

 そこで救急車、パトカーなどもアプリで呼び出すシステムを作り上げる必要性があるのでは、という議論になる。配車サービスが対応しているのだから、緊急車両の派遣にも適用できるだろう。だが、ここにも問題が存在する。

「スマホ利用者と、非利用者の間に救助を受ける際の格差が生まれてしまう」という批判があるためだ。誰でも持っているような気がするスマホだが、2016年時点の米国における普及率は65%程度。つまり人口の3分の1はスマホを所有していない計算になる。とくに高齢者はスマホに対する抵抗があり、救急車の出動を要請する可能性が最も高い世代が、救助を受ける際にハンデを負う事態にもなりかねない。

 実際にはすでに民間が開発した911アプリは存在する。アプリを起動すると、自動的に911センターにGPSによる位置情報、個人情報などを伝える、という機能を備えている。中には自動的に録音機能が作動して犯罪などの現場の証拠を残す、というアプリまである。これは便利なように思える。

 だが、このアプリにも解決できない問題がある。米国の場合、911は警察、消防、救急車など緊急車両を呼び出す共通ナンバーである。したがって位置情報と個人情報を伝えるだけでは、“どのような状況で緊急車両を要請しているのか”が伝わらない。緊急車両の出動を要請した側が、事件なのか、火事なのか、ケガなのかを説明する必要がある。だから、指令センターと会話しない限り、必要とするサービスが的確に受けられないのである。事件現場に消防車が出動しても、適切な救助活動は期待できない……。

 民間ができるサービスを政府機関が提供できない、という現状への批判も広がっており、警察や消防もそろそろ本格的な対応を迫られている。

(報告/土方細秩子、まとめ/CAR and DRIVER編集部)