また、2017年だけで世界市場全体でのEV需要140万台の半分以上となる77万7000台を販売している中国は、2019年から自動車メーカー各社販売台数に対して販売クレジットという数値として全体の10%をEV化するとしている。だが、20XX年までに完全EV化という目標値は現時点で掲げていない。

 そうした中で、インドの「2030年までに完全EV化」という政府の方針は、世界の自動車産業界にとってかなり刺激的な数値であった。

 では、なぜこのタイミングでインド政府はEV関連政策を修正したのか?

 2月上旬から中旬にかけてのデリー周辺取材、および日本でのインド政策に詳しい各方面との意見交換を基に検証する。

実力者A教授の失脚
理想論から現実論へシフト

 インド政府のEV政策に関する軌道修正は、EV政策を仕切ってきた学術関係者のA教授が2017年10月頃に政府関連機関において失脚したことに起因する。

 A教授はインドにおけるEV技術開発の第一人者として君臨し、インド政府が所管する研究開発機関やモディ首相がチェアマンを務める政府系シンクタンクのNITI Aayogなどで絶大な権力を握ってきた。

 しかし、A教授とインド地場の自動車メーカーとの強いパイプにより生じる「利害関係」を問題視する動きがあったり、また2030年に完全EV化の実現に向けた「現実解の議論が乏しい」ことなど、A教授に対する風当たりが徐々に強まり、最終的にはインド政府の主要ポストのいくつかから事実上、更迭されたという。

 A教授が失脚した後、インド政府内でのEVおよび次世代車に関する政策立案については、他の政府系シンクタンクの影響力が増している。

 インド政府のEV政策は「先行きは不透明な状況」というのが、日系自動車メーカー、日系自動車部品メーカー、そしてインド系自動車部品メーカー関係者などから筆者が直接聞いた感想である。