昨夏、安倍首相が衆院を解散したことで、この労基法改正案はいったん廃案となったが、今国会に、まったくと言っていいほど同じ内容が「働き方改革関連法案」に盛り込まれ、提出が予定されていた。

 安倍首相は、これまでと同じように、野党側の「(裁量制拡大は)過労死を助長する」との批判を封じ、「裁量制の労働時間の方が一般労働者より短い」と反論するための「根拠」として、このデータを使ったのだ

「担当者の識別ミス」と厚労省
「官邸への忖度」と野党は疑う

 安倍首相も加藤厚労相も、厚労省に都合のいいデータを作らせたことは否定し続けている。厚労省側も「データを作った担当者の認識ミス」という趣旨の説明を続けている。

 しかし、こうした経緯を踏まえてこの問題を見た時、厚労省の官僚が政権に「忖度」しなかった、と本当に言い切れるのだろうか。

「産業競争力会議」「規制改革会議」「働き方改革実現会議」といった官邸主導の会議を次々と立ち上げて、方針を先に固めてしまうのが安倍政権のやり方だ。

 実際の法案づくりを担う厚労省の官僚は、先に決められた「政権の方針」と野党の反対論との間に、なんとか折り合いをつけて法案成立に持って行くことが最も重要な仕事になっている。

「森友・加計問題」で、官僚の「忖度」が浮き彫りになった中で、官邸と厚労省がいくら「担当者のミス」と説明しても、「忖度」の疑惑は容易には消えないだろう。

つじつまの合わない「異常値」
相次いで見つかる

 ほかにも、労働時間の実態調査でつじつまの合わない「異常値」が相次いで見つかったことが、疑惑をさらに深めることになっている。

 2月19日に不適切データについて、厚労省が記者会見で公表した、調査した1万1575事業所の残業時間を打ち込んだ「元データ」を、野党議員の秘書らが分析したところ、一般労働者の残業時間に、異常値が次々と見つかったのだ。