単なるミスのはずがない
裁量労働制に関する厚労省調査の杜撰
働き方改革法案を巡り、裁量労働制に関する厚労省の調査の杜撰さが次々と明らかになり、国会では野党が厳しく追及するとともに、メディアも連日この問題を報道しています。ついに安倍首相が、働き方改革法案から裁量労働制の対象を拡大する方針を削除するという事態に至りました。
しかし、私は報道を見ていてすごく違和感を覚えざるを得ません。この調査よりもっとひどい官僚の対応が政権の改革を骨抜きにしているのが、色々な部分で目につくにもかかわらず、野党はそれを一切糾弾しないし、メディアも一切報道しないからです。
本題に入る前に、裁量労働制に関する厚労省の調査について述べておくと、本来この問題は、厚労省の杜撰な調査の実態解明と裁量労働制の対象拡大の是非の2つに分けて議論すべきであったのに、前者の問題ばかりを騒ぎ立てた野党とメディアのやり方はおかしいと思います。
前者の問題については、明らかに厚労省の内部に問題があるので、杜撰極まりない調査結果をまとめるに至った経緯は徹底的に究明すべきですが、個人的には、単なる担当者のミスで、裁量労働制で働く人の労働時間の方が短いという数字が出たとは思えません。
というのは、厚労省は省全体として社会保障や雇用の関連で様々な統計データを作成しており、今回問題になった労働時間等総合実態調査を行った厚労省の労働基準局も、その他にいくつかの統計データを作成しているので、データの扱い方についてはかなりの知見と常識を有しているはずだからです。
となると、可能性として考えられるのは、裁量労働制を巡る審議会での議論や国会審議を乗り切るために、裁量労働制の対象拡大を正当化するデータをひねり出せ、という指示があったのではないかということです。
もちろん、だからといって、野党や一部メディアが疑っているように、官邸の指示があったとは思っていません。むしろ、厚労省の官僚の中でそういう指示が出された可能性が高いのではないかと思います。
そもそも官邸は忙しいので、国会がどういう議論になりそうだからどういう数字を用意しろといった細かい指示は出しません。せいぜい国会審議の前日や当日朝に、その日の答弁をチェックするだけです。