この図が示しているように、フィンテックなど新たなビジネスを行うために関連する規制の適用を差し控えてほしい民間の事業者は、まずその規制を所管する官庁と協議しなければなりません。そこで規制所管官庁が合意すれば、サンドボックス制度の対象として規制が差し控えられることになります。

 しかし、当たり前の話ですが、規制を所管する官庁は総じて規制の緩和に後ろ向きです。そして、民間事業者と規制官庁では力関係が天と地ほどに違うので、これではサンドボックス制度の下で規制改革が進むはずありません。

 実際、これまで政府は種々の規制緩和や特区の制度をつくってきましたが、その大半が機能しなかったのは、規制緩和を希望する者はまず規制所管官庁と協議しなければならない仕組みだったからです。

 だからこそ、規制緩和を進めるためには、それを要望する民間だけに任せず、規制を所管する官庁より上位か対等の者、具体的には官邸や内閣府などが関与すべきです。しかし、全国を対象とするサンドボックス制度はそうなりませんでした。

 その理由は、国家戦略特区での家計学園騒ぎで、官邸が安倍首相を規制改革のプロセスに関与させたがらなかったこともありますが、それを奇貨として、どの省庁も所管する規制の改革については自分たちが判断できる仕組みを望んだからです。一言で言えば、官僚によって制度が骨抜きにされたのです。

さらにひどい官僚の対応
まるで使えない遠隔診療

 もう1つの例は遠隔診療です。経緯を説明しておくと、遠隔診療は1997年の厚労省の通知によって可能となりました。しかし同時にこの通知では、対象が離島や僻地の患者に限定され、対象となる診療も9種類程度に限定され、また初診は対面診療で行うべきなど、導入には様々な制約がかけられていました。

 このため、遠隔診療はずっと普及しなかったのですが、2015年に1つの転機が訪れました。厚労省の医政局長名での通知により、1997年通知におけるそれらの制約が取っ払われたのです。だからこそ、この通知をきっかけに多くの医療ベンチャーが遠隔診療に参入し始めました。

 しかし、実際にはまだ制約がありました。保険診療で遠隔診療を行う場合に、診療報酬に算定できる範囲は非常に限定されているのです。だから、たとえば遠隔診療で初診を行なった場合は、初診料が診療報酬に算定されないので、自由診療(健康保険の対象外の診療)となってしまうのです。