役人の大チョンボか、またまた官邸の意向をおもんぱかった「忖度」か――。安倍政権が目玉に据える「働き方改革関連法案」を巡り、厚労省が調査した労働時間のデータのずさんな実態が次々に発覚した。裁量労働制の労働時間が一般労働より短いというデータが、実態を調べたものではない「加工データ」だったことなどがわかった。
安倍首相は答弁撤回に追い込まれたが、その後もつじつまの合わない「異常値」が大量に見つかるは、加藤厚労相が「ない」と言っていた資料が厚労省の地下倉庫から出てくるはのドタバタが止まらない。当初、強気だった安倍政権は、一転、裁量労働制の対象拡大を法案から削除する事態に追い込まれた。
「第二の年金記録紛失事件」の様相にも強気を崩さない安倍政権だが、笑い話ではすまない事態が進行中なのもしれない。
「裁量労働の方が働く時間短い」
政権に都合のいい“加工データ”
28日深夜。2018年度予算がようやく衆院本会議で可決した頃、首相官邸に、二階俊弘自民党幹事長、井上義久公明党幹事長ら与党首脳と、菅官房長官らが急きょ、集まった。
しばらくして「裁量労働制の適用拡大、法案に盛り込まない意向」の情報が速報などで流れた。
日付が変わった1日未明、官邸のロビーに現れた首相は、少しやつれた表情で口を開いた。
「裁量労働制にかかるデータについて、国民の皆様が疑念を抱く。そういう結果になっております。裁量労働制については全面削除するように指示をいたしました」
第二次安倍政権発足から5年超。強気一辺倒だった政権が、目玉法案で大幅な「撤退」を強いられた瞬間だった。
政権が追い込まれることになったデータ問題とは何だったのか。
疑惑のポイントは、大きく2つに分かれる。
一つは、安倍首相の国会答弁の根拠となった労働時間のデータを厚労省が「不適切」に作っていたことだ。