「しーちゃんには2人が必要なんだよ」
飼い犬を盾にして離婚を拒む妻

「16歳の犬を飼っており、僕たちにとって子どものような存在で、家族同然です。すでに高齢で平均寿命を超えていますが、最後まで世話をするつもりです。完全に室内飼いで悠々自適なので案外、長生きしそうです」

 最初のうち、治さんは穏やかな表情で嬉しそうに話をしてくれましたが、「離婚」の二文字が出てきた途端、その表情が一気に暗転しました。治さん夫婦は残念ながら子どもに恵まれませんでしたが、結婚当初から飼っていた愛犬の「シロ」を我が子のように可愛がってきました。そんな治さんは、性格の不一致から、6年間連れ添った妻と別れようと考えており、離婚するにあたって飼い犬をどうしようかと頭を悩ませていたのです。

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
夫:小松治(36歳)/会社員(年収600万円)*今回の相談者
妻:小松愛里(33歳)/パートタイマー(年収100万円)
犬:シロ(16歳)/オス 10歳で里親の小松家に引き取られる

「この1~2週間で考えたことじゃない。6年間ずっとだよ。僕は6年間、ずっと苦しんできたんだ。6年かけて出した結論が変わることはないよ。ここで離婚しないで、また1年、2年と経って……『あのとき別れておけば』とまた後悔するに決まっている!時間がかかればかかるほど、僕だけじゃなくて愛ちゃん(妻の呼び名)も苦しめることになるよ。僕だけじゃない。愛ちゃんも人生をやり直せなくなる年齢になるのは嫌なんだ」

 治さんはこのように決死の覚悟で妻に離婚を切り出したのですが、妻は悠長なそぶりで「私はそんなことないよ。治ちゃんと暮らしていきたいと思っているから」と返してきました。そこで治さんは「そうやって僕を5年、10年と束縛するつもりか!」と声を荒げてしまったそうです。

「しーちゃん(犬のシロの呼び名)には2人が必要なんだよ」

 そんなふうに妻は飼い犬を人質にとって、応戦してきたのです。言葉に窮した治さんが「しーちゃんに聞いたのか?」と尋ねると、妻は大真面目な顔をして「聞いたよ。見ればわかるよ。治ちゃんがいないと落ち着かないもん」と返してくるので、らちが明きません。ところが、それだけではありませんでした。