さらにゼロックスは富士フイルムHD以外の競合他社またはファンドに正当なプレミアムを乗せた上で売却するのが好ましいとし、「このひどい取引を却下させることが株主の利益になるということは、考えずとも明白だ。ゼロックスは、富士(フイルムHD)がゼロックスを必要としているほど富士を必要としてはいない」という辛辣な言葉で結んでいる。

 ゼロックスは相次ぐ両氏からの書簡に適時開示書類で反論を行うなど一歩も引かず、事態は泥仕合の様相を呈してきた。

“無傷で買収”は困難に

 ディーソン氏が提起した訴訟に加え、アイカーン氏は委任状争奪戦も辞さないと表明しており、早期に決着するめどは立たなくなった。沈黙を守る機関投資家を主とした他のゼロックス株主の合意を得られるか否かが、世紀の買収の要となる。例年であれば5月に開催されているゼロックスの株主総会が次のヤマ場となりそうである。

「ゼロックス買収によりHDからの現金流出は発生しない。このスキームができたからこそ買収を決断した」と富士フイルムHDの古森重隆会長は買収発表時の会見で強調したが、この痛みを伴わないスキームが、厄介な物言う株主を刺激したことは間違いない。

 アイカーン氏はドナルド・トランプ米大統領のアドバイザーを務め、経営者に強硬な姿勢で企業価値を上げさせることで知られた投資家だ。買収価格の見直しや、ゼロックス株主への還元策の上積みという手を打たざるを得なくなる可能性も高いだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)