春闘の集中回答日が3月14日に迫っている。労働力不足が深刻化し、非正規労働者の時給が上昇する中、正社員の賃上げにも期待する向きも多いようだ。
5年目となる“官製春闘”では、安倍晋三首相が初めて数値目標として「3%の賃上げ」を求めたし、2月には榊原定征経団連会長も「『賃上げ3%』という社会的期待を意識した上で、前向きな対応をよびかけている」と発言している。
しかし筆者は、大企業の春闘には期待していない。というのも、大企業には賃上げのインセンティブが乏しいからである。
儲かってるから
賃上げするは昭和の発想
バブルの頃まで、日本の大企業は「従業員の共同体」であった。「株主には資本金を出してくれた謝礼として、ある程度の配当は払っておこう。残りは従業員に報いよう」という考え方で、企業の儲けが賃上げに直結していた。
しかし、バブルが崩壊すると、そうした「日本的経営」は変質し始める。雇用の維持を最優先とする点など、日本的経営の本質部分は比較的堅固に残っているものの、「グローバルスタンダード」などという言葉によって、利益配分の面では大きく様変わりした。日本の大企業は、「株主の金儲けの道具」へと変質したのだ。