北朝鮮は昨年2月12日から9月15日までの7ヵ月間に計13回の弾道ミサイル発射実験を行ったが、それ以降は2ヵ月以上中断していた。

 だが米国は9月11日に国連安保理が決議した内容をはるかに上回る独自制裁を発表、中国等にも同調を求めたから、北朝鮮はそれへの牽制のためか11月29日にICBM「火星15」の発射実験を行った。これは高度4400kmに達し、53分も飛行した。米国とロシアの間をICBMは30分ないし40分で飛ぶから、53分も飛行したのは驚くべき性能だった。

 だが、この実験後、金委員長は「核武力完成の歴史的大業、ロケット大国の偉業が実現された」と開発の一段落を示す声明を出し、核・ミサイル実験凍結を条件として、米国との対話をはかろうとしていると解釈できる姿勢を見せていた。

 核・ミサイル開発を凍結する場合、「米国の軍事的圧力や経済制裁に屈した」と内外で言われるのを、少しでも防いで面子を保つためには「完成したからこれ以上実験の必要はない」と唱えるしかなかっただろう。まさしくこの時の声明は、今回の「米朝対話」合意の予兆だった。

経済制裁逃れよりも
米国の攻撃を避ける狙い

 日本政府は常に「必要なのは最大限の圧力だ。対話ではない」と唱え、経済制裁に北朝鮮が屈して核放棄を言い出すことを願っていた。だから今回、北朝鮮が「非核化をめぐる協議」を含む米朝会談を求めてきたのは「経済制裁の効果だ」と喧伝する。

 だが、北朝鮮が「核・ミサイル武力の完成」を語って、凍結の気配を示し始めたのは昨年10月28日だった。経済制裁の効果が出るには数ヵ月以上掛かるから「北がそれに音をあげた」と言うのは早すぎる。9月11日の国連による制裁決議から半年たった今日でも、北朝鮮経済の苦境が極度に達した様子は見られない。

 また米朝首脳会談が行われても、すぐに経済制裁が解除されるはずがないことも金委員長は分かっているはずだ。