冷戦時代の感覚では間違う
戦争回避に必死の首脳たち

 その一方で、トランプ大統領は以前から「圧力強化」を目ざすと同時に「対話を望む」意向も示していた。

 1月9日に板門店で南北閣僚級会談が開かれる5日前の4日に米国はオリンピック、パラリンピック開催中は米韓合同演習を延期することに同意した。さらに6日には、トランプ大統領は9日に開かれる予定の南北閣僚級会談について記者団に「良い結果を望む。オリンピックの範囲を超えた話し合いが行われれば素晴らしい。適切な時期に米国も関わる」と歓迎と期待感を示していた。

 当時この会談のテーマは平昌オリンピックでの南北協力に限定される、と思われていたが、トランプ大統領はそれ以外の政治的議題も協議されることをすでに知っていた様子だ。韓国は十分トランプ大統領に根回しを行っていたのだろう。

 この会談ではオリンピックへの北朝鮮の参加の外に「軍事的緊張状態を緩和するため共同で努力し、解決のため軍事当局者会談を開催する」「南と北は南北関係のすべての問題を朝鮮半島問題の当事者として、対話と交渉を通じて解決する。このため各分野の会談を開催する」ことが合意された。

 トランプ政権はただちにこの会談を「前向きな動き」として歓迎する意向を表明、文大統領との電話会談でトランプ大統領は「適切な時期と状況下で米朝対話を行いたい」と積極的姿勢を示した。トランプ大統領にとって、北朝鮮に対し振り上げた拳を降ろす機会だったのだろう。

 このような事態の推移を見ていれば、3月5日に金正恩委員長が韓国特使団に対し「米トランプ大統領との対話を望んでいることを米国側に伝えてほしい」と言い、8日韓国の特使が訪米して報告したところ、トランプ氏が国務省などと相談せず、独断専行で即座に首脳会談開催に同意したのは「意外」でも「突然」でもない。自然な流れの結果だった。

 いまなお冷戦時代そのままの国際感覚で情勢を見る人々は「日米韓が連携し、北朝鮮と対決」という図を頭に描き、それに合致した情報を重視し、それに反するものは無視するから、予測が狂ってあわてることになる。情勢判断にイデオロギーや感情などのバイアスは禁物なのだ。