■ケース2 民族大移動

 自動車部品メーカーのホイーラー社は、ほかに例を見ない徹底ぶりで水平異動を展開しています。

 地方に多数の営業所をもっていますが、最近の人事異動で、25人の上級取締役が「地域統括副社長」となり本社から姿を消しました。また、同社はモーテルを一軒買収して、一人の重役にその経営を命じました。仕事のない別の副社長は、もう3年間も社史の編へんさん纂にかかりっきりです。

 大きな組織ほど、水平異動が容易に行えるというのが、私のたどりついた結論です。

だれを管理するの?――管理職の空中浮遊

 ある官庁の小さな部署で、82人の職員全員が、別の部署に配置転換になりました。

 高給の恵まれた待遇で一人残された管理職は、何もすることがなく、部下が一人もいない状況に置かれています。これは階層構造的には、頂点の冠石があっても下を支える礎石がない宙ぶらりんのピラミッド状態と言えます。

 このような興味深いケースを、私は「管理職の空中浮遊」と名づけています。