姚依林が国務院副総理として経済政策を担当し、党においても中央書記処書記という要職を務めていた1982年、王は同処の農村政策研究室に配属され、政治の道を農村問題専門家としてスタートさせた。

 その後、中国人民銀行副総裁、中国建設銀行総裁などを歴任し、同総裁歴任中には同行と米モルガン・スタンレー社が共同出資する形で中国初の合資投資銀行となる中国国際金融有限公司(CICC)の設立に尽力し(1995年)、自らも董事長を兼任した。その頃から王と付き合いのあるヘンリー・ポールソン元米財務長官は自著『Dealing With China-An Insider Unmasks The New Economic Superpower』(TWELVE, 2015)の中で当時の様子を振り返りつつ、「王は心が温かく、ダイナミックなリーダーだった。カリスマ性や知的好奇心に満ちており、中国人、西洋人を問わず、人と人をつなぐ超人的な能力を持っていた」(8頁)とその人物像を形容している。

 その後、広東省副省長、海南省書記、北京市長など地方での執政経験を積み、2008年に岳父と同じ国務院副総理に就任してからは、米中経済戦略対話の中国側代表として対米関係のマネジメントに奔走した。昨秋まで中央規律検査委員会書記、すなわち“反腐敗闘争”の統括者として“習近平第1次政権”の権力基盤強化、および党内の“粛清”に尽力していた。

中国の国家副主席には
三つのタイプがいる

 中国の国家副主席には三つのタイプがいると筆者は考えている。(1)“次”を見据え安全運転でいくタイプ、(2)何もせずおとなしくしているタイプ、(3)状況に応じて大胆かつ柔軟に動くタイプである。(1)は前々任の習近平、(2)は前任の李源潮、そして(3)が今回の王岐山が典型的人物だといえる。

 そんな王岐山は国家副主席として何にどう取り組むのだろうか。王のミッションは大きく分けて三つあるように思われる。

 一つ目が「習近平の相談役」。分野を問わず、習の悩みを聞き、考えを伝え、“二人三脚”で国家運営をしていく。二つ目が「対米関係マネジメント」。経済貿易関係や朝鮮半島、台湾問題など懸案が積もるトランプ政権下の米国との関係を安定的に発展させたい。三つ目が「反腐敗闘争と経済・金融政策&構造改革のフォローアップ」。