日銀の超緩和策は住宅ローンに例えると危うさがよくわかる国会で答弁する日本銀行の黒田東彦総裁(右)と安倍晋三首相。政府は日銀の金融緩和策に甘えず、財政健全化を進める必要がある Photo:JIJI

 政府と日本銀行を合体させた「統合政府」で考えれば、日銀が国債を買い続ければ、政府の借金は“帳消し”になる。それ故、財政再建を進める必要はないのだ、という妄言を時折耳にする。

 残念ながらそういった夢のような「打ち出の小づち」は存在しない。もしそれが本当に有用なら、世界中の政府と中央銀行が既にそれをスタンダードな政策として採用しているはずだ。しかし、そうはなっていない。その手が使えないからこそ、米国では政府債務上限に起因する政府機関閉鎖などの混乱が度々生じている。

 あらためてこの問題のポイントを以下に整理してみる。

 日銀が超金融緩和策を開始する前の2013年2月と今年2月を比較してみよう。5年間の大規模国債買いオペレーションによって、日銀が保有する長期国債は93兆円から430兆円に増えた(プラス337兆円)。

 国債買いオペに応じた金融機関が日銀に国債を売却すると、代金はそれぞれの日銀当座預金口座に振り込まれる。つまり、日銀が市中から国債を買うと、日銀当座預金残高が増加する。同残高は13年2月時点で44兆円だったが、今年2月には367兆円に達した(プラス323兆円)。日銀は、民間が持っていた長期国債を日銀当座預金に交換してきたといえる。

 ここで、政府と日銀のバランスシート(貸借対照表)を合体させた「統合政府」を考えてみよう。

 長期国債は「統合政府」の民間に対する長期の借金だ。一方で、日銀当座預金は「統合政府」の民間に対する超短期の借金である。期間1日の金利が毎日ロールオーバー(借り換え)されていく。