自宅や職場、外出先などから、即座に必要なファイルにアクセスできるクラウドストレージサービス。その便利さを改めて説く必要はないだろう。「Dropbox」を筆頭に、様々なビジネスシーンで活用している向きも多いに違いない。
そんな中、ファイルではなく、アプリケーションを丸ごと同期してくれるサービスが注目を集めている。それが「Synclogue」(シンクローグ)だ。Windowsアプリケーションを、複数台のパソコン間で同期させることができるソフトウェアである。
たとえばPCを新しく買い替えたり、モバイルPCをサブマシンとして購入した際、これまで使用してきたアプリケーションを再インストールしたりするのは案外と面倒なものである。また、仮に再インストールしたとしても、以前と同じ設定を反映させることは困難だ。
かといって、Windowsアプリケーションを同期させようとする場合、ファイルやフォルダを移動すればよいというわけではない。レジストリなどの制約があるため、完全な同期は難しい。それらの点を独自の仮想化技術によってクリアしたのが、「Synclogue」なのである。
「Synclogue」の使い方は実にシンプルである。ユーザーはアカウントを取得後、1台目のPCに「Synclogue」クライアントアプリをインストールする。そこに任意のアプリケーションをドラッグアンドドロップするだけでいい。2台目以降のPCにも同様にクライアントアプリをインストールすれば、自動的に同期が完了する仕組みとなっている。
ただし、アプリケーションの共有となると、著作権の問題がある。その対策として「Synclogue」では、違法なアプリケーションの共有を禁止し、開発者向けにアプリケーションの複数人での共有を禁じる手段も提供している。
ソフトウェア会社との協働については、詳細は「非公開」としながらも、「将来的にアプリケーションベンダー側にも利用者側にも、ベネフィットを得られるような構造を想定しています」(Synclogueの山本泰大CEO)とのことである。「Synclogue」は「Windows Azure」の活用事例としてマイクロソフトのサイトでも紹介されており、ソフトウェア会社からも期待を寄せられていることがうかがえる。
「Synclogue」の強みは、極めて高い技術力によってWindowsが抱える長年の問題点を解決することに成功した点にある。現在は、その強みを持って世界展開を目指しているところだ。マーケティングの中心も、当初からアメリカでのスタートを視野に入れている。
「世界で戦っていくためには技術優位性か、圧倒的な利用者数のどちらかが必要になります。ですが、日本では後者の実現が難しい。世界で戦うには前者であるべき。日本だけではなく、世界で使用されるインフラとして成長していきたい」(同氏)
それだけに、開発にも慎重を期している。現在は、一般用IDの登録を停止し、安定化に向けて詰めの作業を行なっているところだ。本年6月~8月発表予定のベータ版を経て、正式リリースは11月頃を想定しているとのこと。
「インフラ系のサービスは、中途半端なものを出すことが許されません。利用者が使えるレベルとして十二分なものでなければならないのです」(同氏)
世界で通用するインフラとなることを目指す「Synclogue」。その志に、私たちも大いに“シンクロ”したいものである。
(中島 駆/5時から作家塾(R))