長い低迷が続く日本経済。厳しい時代、企業が「生き残る」のではなく「勝ち残る」のに最も重要なのは、会社の技術力云々よりもまず「経営者の力だ」と遠藤氏は指摘する。はたして今、経営者たちがなすべきこととは何か? 遠藤氏に話を聞いた。
いくつでもある「勝ち残り」の成功例
「違い」は、経営者の姿勢と行動力にある
「北嶋絞製作所」という会社をご存じでしょうか。この会社は戦後まもなく、金属のへら絞り加工を請け負う事業でスタートしました。社員数わずか20人の会社ですが、特殊金属のへら絞り加工を得意とし、独自技術を磨き続けています。その高い技術力はさまざまな業界で注目され、半導体製造装置や航空機、さらには人工衛星の部品に至るまで手がけています。まさに「勝ち残る企業」のお手本です。そして、同社は昨年、中国・大連の国際工業博覧会に単独出展し、中国進出を目指しています。
産業の種類や企業規模の大小とは関係なく、あらゆる会社が今は「グローバル戦国時代」のなかにいる。世界市場を主戦場とし、世界中のライバルと競争していく時代です。「そんなことは百も承知」という中堅・中小企業経営者の多くは「どうすれば生き残れるか」を必死で考えていることでしょう。しかし、私は「生き残る」のではなく「勝ち残る」ことを考えるべき時代だと捉えています。
「生き残る」ことは、かつての日本企業が何度も経験してきました。「不況という困難な時期を、なんとか耐えて忍んでやりすごす」という姿勢です。しかし、今訪れている困難はそもそも質が違う。「日本は苦境の中にいる」という論調をメディアは続けていますが、未来を見据え、着実に手を打っている日本企業も数多く存在します。
たとえば今、中国で大規模なショッピングセンターを建設しようという話になると、ファッション分野の品揃えにおいて「絶対に外してはならないブランド」というのが4つ存在するのだといいます。それはH&M、ZARA、UNIQLO、MUJI。最初の2つは北欧やスペインで生まれて大成功したブランドですが、残る2つは純然たる日本発のブランド、ユニクロ(ファーストリテイリング)と無印良品(良品計画)です。「生き残る」ための経営、堪え忍ぶだけの経営をしていたら、こうした企業が中国で成功することはありえません。世界の市場は日本を待っているのです。